車椅子は日に日に軽く

Shiromfly

車椅子は日に日に軽く

青いスチールの扉の向こうに女 帰り道こそ初めての母


授業参観 祖母と云うその人が振る 古き香りに僕は置いてく


酔う祖父の 手元で押し黙る ガラスの灰皿 重くて痛く


夏休み 男倒れて静けさが 束の間よぎる ざまあみろ


疲れ果て老いて翳る背 目を逸らしたまま ぼくは影になる


祖母もまた病で並びて麻痺の身の 二人ぶんのシンメトリー


ドラム撃つ 最初で最後の文化祭 ぼくは確かにそこに居たらしい


仕事して 祖父母を支えて 装って 逃げ場のネトゲもやはり仮面で


逝くひとへ握り返した掌は 首の代わり 許しの擬態


死嘯く 包丁の刃も頬も床も 冷たきて時を止めたまま

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