シラバス:現代死生学と情報技術

(「チェルシーおばあちゃんとのお別れ」のスピンオフです。)

(筆者注:なにか私自身がすごく受けたい授業になってしまいました)


シラバス:現代死生学と情報技術(Modern Thanatology and Information Technology)

科目コード: 960032-0011

単位数: 2単位

対象: 学部生(2~4年次推奨)

授業形態: 講義、ディスカッション、プロジェクトベースの課題

担当教員: アビゲイル・パターソン、シヌーク大学客員教授(死生学・情報科学)、パターソン・メモリアル・サービシーズ株式会社CEO

学期: 2096年秋学期

授業時間: 火曜・木曜 10:00-11:30

場所: 情報通信技術 (ICT)棟、講義室135

連絡先: abigailpatterson@u-chinook.ca


コース概要

「現代死生学と情報技術」は、死生学(thanatology)と情報技術の交差点を探求する学際的科目です。死、喪失、グリーフケア、死生観を心理学、社会学、倫理学の視点から分析し、デジタル時代における記憶の保存、追悼文化、テクノロジーの影響を考察します。本コースでは、北米の葬送文化(エンバーミング、集団霊廟(community mausoleum)、ビューイング)や現代的な死生観(キリスト教的魂の不滅、個人主義)を背景に、情報技術が死と記憶に与える新たな可能性と倫理的課題を学びます。「ナタリーと過ごした珠玉の11000日」 (バーバラ・ブラッドバリー著)を例に、個人的な物語が死生学やデジタル文化にどう貢献するかを探求します。


コースの目的

本コースの目的は以下の通りです:

死生学の基礎理論(死、喪失、グリーフケア)を理解し、文化的・心理的文脈で分析する能力を養う。

情報技術(デジタルメモリアル、AI、SNS)が死生観や追悼文化に与える影響を評価する。

エッセイ「ナタリーと過ごした珠玉の11000日」 を通じて、死と記憶の現代的意義を探求する。

デジタル遺産の管理やテクノロジーの倫理的課題について批判的に思考する。

学術的ディスカッションやプロジェクトを通じて、死生学と情報技術の融合を実際的に応用する。


学習成果コース修了後に、学生は以下の能力を獲得することが望まれます:

死生学の主要概念(グリーフケア、死生観、葬送文化)を説明し、文化的文脈で適用できる。

デジタルメモリアルやAI技術が追悼文化や記憶の永続性に与える影響を分析できる。

記述された個人的な物語(例: エッセイ、追悼サイト)を用いて、死生学のテーマを学術的・感情的に探求できる。

デジタル遺産の倫理的課題(プライバシー、データ管理)について批判的視点を持つ。

プロジェクトを通じて、死生学と情報技術を統合した実践的提案を構築できる。


授業内容とスケジュール

全15週のコースで、講義、ディスカッション、グループプロジェクトを組み合わせます。


第1週: イントロダクション:死生学と情報技術の交差点

死生学の概要:死、喪失、グリーフケアの基礎

情報技術が死生観に与える影響の紹介

事例:「ナタリーと過ごした珠玉の11000日」 に見る個人的物語の意義

課題:自己紹介と死生学への関心を記述(500語)


第2週: 死生学の歴史と文化的背景

北米の葬送文化:エンバーミング、霊廟、ビューイング

キリスト教的死生観:魂の不滅、家族の絆

ディスカッション:「チェルシーおばあちゃんとのお別れ」における霊廟の象徴性

参考書:Kübler-Ross, E. (1969). On Death and Dying


第3週: グリーフケアと心理的アプローチ

グリーフの段階モデルと現代的批判

家族のグリーフケア:「ナタリーと過ごした珠玉の11000日」 に見る母親の視点

ディスカッション:母親がエッセイを通じてナタリーの記憶をどう永続させたか

課題:グリーフケアの事例分析(1000語)


第4週: デジタルメモリアルの台頭

オンライン追悼サイト、SNSでの追悼投稿

事例:「ナタリーと過ごした珠玉の11000日」 の出版とデジタルアーカイブ

グループディスカッション:デジタルメモリアルの利点と課題

参考書:Walter, T. (2015). New Mourning: Online Memorials


第5週: 情報技術と死生観の変容

デジタル時代における死生観の変化

VR/ARを用いた追悼体験

事例:チェルシーのUIデザインとデジタル遺産の関連性

課題:デジタルメモリアルの事例調査(プレゼン準備)


第6週: AIと故人の再現

AIチャットボットによる故人との模擬対話

倫理的課題:プライバシー、同意、感情的影響

ディスカッション:ナタリーが霊廟で墓参者と「会話」するイメージとAI技術

参考書:O’Connell, M. (2021). Digital Afterlives


第7週: デジタル遺産の管理

SNSアカウントの管理、デジタルデータの継承

法的・倫理的課題:誰が故人のデータを管理するか

課題:デジタル遺産管理のポリシー提案(グループプロジェクト)

ゲスト講義:デジタル遺産専門家


第8週: 中間試験

筆記試験:死生学の理論、デジタルメモリアルの事例分析

エッセイ課題:「ナタリーと過ごした珠玉の11000日」 を基にした死生観の分析(1500語)


第9週: 個人的物語と死生学

個人的な物語(エッセイ、回顧録)の学術的価値

事例:「ナタリーと過ごした珠玉の11000日」 に見るナタリーとチェルシーの友情

ディスカッション:ブレリンの好奇心と物語の継承

参考書:Bradbury, B. Our Wonderful 11000 Days: A Reflection on Life and Afterlife(「ナタリーと過ごした珠玉の11000日」 )


第10週: コミュニティとしての霊廟

北米の霊廟文化:記憶の永続性、家族の絆

事例:霊廟の「集合住宅」としての象徴性

課題:霊廟訪問レポート(1000語)


第11週: テクノロジーと倫理的ディレンマ

デジタルメモリアルのプライバシー問題

AIによる故人の再現とアンドロイドへの意識・人格移植の倫理的議論

ディスカッション:ナタリーの追悼サイトや彼女が生前使っていたSNSサイトがデジタル遺産としてどう機能するのか

参考書:Stokes, P. (2020). Digital Souls


第12週: 現代死生学の社会的影響

高齢化社会と死生学の役割

情報技術が葬送文化に与える影響

事例:チェルシーの100歳まで、死の直前までの活躍そして大往生を遂げた一生(Chelsea's long and fulfilling life)を見て考える現代死生観

課題:最終プロジェクト提案書(グループ)


第13週: グループプロジェクト作業

訃報サイト、デジタルメモリアルまたは追悼プロジェクトの設計

ワークショップ:プロジェクトのプロトタイプ作成

フィードバックセッション:教員・クラスメートからのコメント


第14週: 最終プロジェクト

プレゼンテーショングループごとのプレゼンテーション:デジタルメモリアルまたは追悼プロジェクト

ディスカッション:プロジェクトの社会的・倫理的意義

事例:「ナタリーと過ごした珠玉の11000日」 を基にした追悼サイトの提案


第15週: 総括と振り返り

現代死生学と情報技術の未来

コースの振り返り:受講生の視点から見た物語の意義

最終試験:総合的なディスカッションとエッセイ提出(2000語)


評価方法出席と参加: 20%(ディスカッション、グループ作業への貢献)

課題(エッセイ、レポート): 30%(各500-1500語、3回提出)

中間試験: 20%(筆記試験、エッセイ課題)

最終プロジェクト: 20%(グループプレゼンテーション、提案書)

最終試験: 10%(総合エッセイ)


必須テキスト

Kübler-Ross, E. (1969). On Death and Dying. (グリーフの段階モデル)

Walter, T. (2015). New Mourning: Online Memorials. (デジタルメモリアル)

O’Connell, M. (2021). Digital Afterlives. (AIと故人の再現)

Stokes, P. (2020). Digital Souls. (デジタル遺産の倫理)

Bradbury, B. Our Wonderful 11000 Days: A Reflection on Life and Afterlife(「ナタリーと過ごした珠玉の11000日」 )


推奨テキスト

Ariès, P. (1981). The Hour of Our Death. (葬送文化の歴史)

Sofka, C. (2012). Dying, Death, and Grief in an Online Universe.


受講上の注意前提知識: 死生学や情報技術の予備知識は不要だが、心理学や社会学の基礎が推奨される。


倫理的配慮: 死や喪失に関するセンシティブなトピックを扱うため、感情的なディスカッションに配慮が必要。サポートが必要な場合は教員に相談。


技術要件: デジタルプロジェクトのため、基本的なPCスキルとインターネットアクセスが必要。


文化的背景: 北米の葬送文化(霊廟、グリーフケア)に焦点を当てるが、日本の墓参り文化など他文化との比較も歓迎。


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