こんにちは、チェルシー

 私がここに来てからもう何年、いや、何十年たったのでしょうか。この日、私の右隣の空き部屋が騒がしかった。それはある意味懐かしい音だった。その間作業を見守るこれから私の隣人になろうとしている人の家族や関係者たちも取り囲んで結構騒々しかった。


 私の左隣の部屋も長い間空いていたけどその後、二つ先にパパが、隣にママがやってきた。私の方はと言うとあのときの「エステ」の効果で見た感じ体の欠けもないしカビも生えてないのでうれしかった。


 そんな事を考えていたら「引っ越し作業」が終わったようで辺りは静けさを取り戻した。その時、思わぬ声をかけられた。

「こんにちは、ナタリー。これからずっと一緒だよ」

「ち、チェルシー……なんでここに? ママから『ここは妹の部屋だよ』と言われていたのに」

「君んちからこの区画買ったんだよ。妹さんが仕事の都合で遠くに住むようになって、そしてそこで結婚して使わなくなったからって」

それはチェルシーとずっと一緒に過ごせるようになったこととの引き換えに、もう将来妹ちゃんと一緒にいることはないということを意味していた。

「ありがとう、チェルシー。普通に売られて知らない人が入ることを考えたら」

「私は何ヶ月か前に百寿の誕生日を祝われたんだ。でも家で仕事をしていて小学生くらいの孫の目の前でウェアラブルコンピュータ―のUIをついさっきまで作っていたんだよ。でも、ある夜、寝たらそのまま起きれなくてそのまま流れに乗ってここまで来ちゃったんだ」

おつかれさまでしたグッジョブ、チェルシー」

「どういたしまして」

「もうここでは仕事のことは忘れてゆっくりして」

「いやぁ、半分趣味でやってたからちょっぴり寂しい」

「そうじゃなかったらこの歳までできないもんね……」

「もちろんさ」

彼女との話は尽きなかった。

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