第3話 転校生

「はい、皆さんおはようございます。学校生活にはもう慣れましたか?今日は皆さんに一つご報告があります」

「なんだなんだ?」

ザワザワ

 教室の中が少しさわがしくなる。

「えー、このクラスに転校生が来ました。河野さん、入って来て下さい」

 教室の引き戸が開き、一人の女の子が入って来る。

「河野 凛乃(かわの りの)です、よろしくお願いします」

 入って来た女の子は、小柄でとても華奢な女性だった、そして、雰囲気を見るに、少しシャイな子だと思った。

「(転校生か、新学期だし、一人は居るよな。まあ、一つ問題があるとするなら……)」

 九条の方に目をやる。

「(あいつがどう扱うかだな。ん?てか、なんか顔色おかしくね?あいつ)」

 九条の顔が異様に赤くなっている。

「(あいつそういえば顔に出やすいタイプだったな、周りの女子には興味無いって言いふらしてたけど、一目惚れでもしたのか)」

 「転校生に一目惚れ」コレはマンガとかではありきたりな展開だが、九条の場合は話が変わってくる。九条がその人が好きになる=何をしてでも自分の物にしようとするからだ。

「(ちょっとマズイなこりゃ、とか言っても、誰も九条のヤツを止める事は出来ないからな)」

 そうして思考を巡らしていると先生が口を開いた。

「空いてる席はそうだな……天宮くんの隣だな。河野さん、あの空いてる一番後ろの席に座ってくれないか?」

「はい」

「ん?(コレ、貧乏くじ引いちゃった?)」

 普通ならこんなおいしい話は無い、転校してきた華奢な女の子が隣の席になる、こんなの恋愛物ではありきたりな設定で、世の中のほとんどの男子は歓喜するだろう。でも、この場合は違う、確かに転校生が隣の席に座るのは嬉しい、けど九条に目をつけられたのと同じだ。

「あはは、よろしくね、河野さん」

「……」

コクッ

 頭を少し下げた。

「(やっぱりシャイな子なんだな)」

ギロッ

 九条が僕のことを睨んできた。

「(だよなー)」

「先生ー!城守が黒板見にくそうにしてまぁーす!僕の席と交換しません?」

「ん?そうなのか城守?」

「いやいや、そんな事無いですよ」

「そうだよな、城守は裸眼で1.3はあるもんな、そんな急に目が悪くなったら、先生びっくりするわ、あはは」

「チッ、クソが」


キンコーン……

 チャイムが鳴り、授業の知らせが届く。

「よし、それじゃあ授業始めるぞー」

「あの、先生……」

「ん?どうした河野さん?」

「教科書……」

「あっ……」

「(おい、まさか)」

「本当にごめん、用意するの忘れてた」

パッ

 思わず頭を抱える。

「って事で城守、机くっつけて一緒に教科書見せてあげてくれないか?」

「全然大丈夫ですよ(ふざけんな、俺への九条のあたりが強くなるやろが)」

 コレばかりは不可抗力だから、仕方ないと自分を無理矢理納得させ、授業は始まった。

 



 

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る