第4話 羨望
授業中に軽く会話を挟むと、意外と共通の趣味があって、話が盛り上がった。授業はあっという間に終わり、休み時間になった。
「それでさ……」
「へー、ソレは面白いね(いざ話してみると、普通に話せるじゃん、もう少しシャイな子だと思って、気を使ってしまったな)」
休み時間になり、話の続きを喋っていると、廊下の方から視線を感じた。
「(何だ?)」
視線の先には誰もいなかった。
「ごめん、河野さん、僕ちょっとトイレに行って来るわ」
教室から出て、廊下を見渡す。廊下にはそれらしい人影はいなかった。
「気のせいか」
トイレに入り、用を足していると、個室から誰か出て来た。
「おーい、流しわすれ…」
ザァー
頭から急に水をかけられた。
「は?」
急な出来事で頭が真っ白になる。
パンッ
額に手を当て落胆する。
「チッ、やられたわ」
用を足し終わると、手を洗い、ダッシュで教室に戻る。
「クソが、誰がやりやがった」
ゆっくりと頭に血が上るのを実感して、教室の中に目をやると、騒がしくなっていた。
「転校生で、容姿も良いから、人気物になるわな」
河野さんの周り沢山の人が集まり、色々と質問しているようだ。
「こりゃ、俺はお邪魔だな」
そうは言っても、もうすぐ授業が始まる、でも服も体もビショビショだ、ソレに犯人も誰か分からないからどうしよもない。
その時、誰かが歩いて来た。
「あれー?永夢ぅ?何で濡れてるのかな?」
「チッ(絶っっ対コイツだ)」
トンッ
肩に手を置かれ、九条が口を開く。
「まるで頭からバケツの水を被ったみたいに」
「ッ!」
「なんだ?俺を疑っているのか?証拠も無いのに酷いなー」
「……(こらえろ、ここで暴れても、俺が不利になるだけだ)」
「あんま……乗るなよ?」
九条が何かを呟いた。
「は?」
「あんま調子乗るなよ、って言ったんだよ!」
ドンッ
九条が力いっぱいみぞおちを殴った。
「ウッ」
後ろにのけぞり、腹を押さえてうずくまる。
「何すんだよ」
「河野は俺のもんだ!」
「?」
思わず顔を顰める。
「今日来たばっかりだぞ?お前の彼女でも無いし、何を根拠に言っているんだ?」
「今日彼女が教室に入ってきた時に、 俺と目が合ったんだ、そん時に確信した、アイツは俺の事が好きなんだと」
「は?頭沸いてんのか?(思考が常人の考えじゃないぞ)」
コツコツッ
頭の中が疑問符で一杯になった。その時、後ろから革靴の音が近づいて来た。
「おーい、二人ともそろそろ次の授業がはじ…って城守?何でお前濡れてるんだ?」
「すみません、僕がついさっき勢い余ってバケツの水をかけちゃいました」
「なんで水が必要だったんだ?」
「あっそうだ、先生!教科書重そうですね、代わりに持ちますよ!」
「おお気が利くな、サンキュー。城守、保健室行って、着替えてこい」
「はい…」
この日はこれ以上九条と関わらないように過ごした。でも、この時の僕はまだ知らなかった、この九条の虚言が、まさかあの事件を引き起こすなんて…
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