エピローグ 返事はもう、いらない

未来の僕へ


あの手紙たちが、どこから来たのか、今でも分からない。

本当に未来の自分からなのか、妄想か、夢か──

でも、確かに、心の奥になにかが残ってる。

あの手紙を読んだ日から、世界がほんの少しだけやわらかく見えるようになった。

たとえば昨日、友達の話をちゃんと聴いてみた。

いつもなら「ふーん」で終わらせてた悩みに、

「それ、つらかったね」って言えた。

帰り道、夕焼けの空がきれいで、

それを誰かに教えたいと思った。

そんなふうにして、

僕の中の“生きていたい”って感情が、

少しずつ動きはじめた。

正解なんてまだ分からないし、

明日また落ち込むかもしれないけど、

「それでもいいんだ」って思えるようになった。

ありがとう。

君が送ってくれた、いくつかの“未来”という種。

僕はそれを、今日という土に、そっと埋めてみるよ。

返事はもう、いらないよ。

なぜなら、

僕が少しだけ、君に近づけた気がしてるから。

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