第2章 焼かれたあとに残ったもの

2通目の手紙|「焼かれたあとの静けさ」


あの火葬場の匂い、今も鼻に残ってるんだ。

骨になっていくおばあちゃんを見て、何もわからなかった。

涙も出なくて、ただ真っ白な壁を見てた。

「死ぬって、こういうこと?」

それからずっと、自分の命にも他人の命にも、なんとなく“距離”ができた。

僕は誰かをちゃんと好きになれるのかな?

誰かのために泣けるのかな?

いま目の前にある人たちのことも、

どこか本気で関われない自分がいる。

君はどうだった?

君は、ちゃんと誰かを愛せるようになった?



2通目の返事|「君が泣けなかった日も、愛は生まれていた」


アラタへ

君が見た「焼かれる」という現実は、

たしかに僕たちに、命の“有限”と“無力さ”を叩き込んだね。

涙が出なかったのは、冷たいからじゃない。

君の中で、感情が深すぎて、言葉にも涙にもならなかったんだ。

それは、きっと「最初の愛の喪失」だった。

だからこそ、僕は──君は──

もう誰かを雑に扱えない。

愛するって、心を開くってことだけじゃない。

「触れてはいけない痛みに、そっと寄り添う」ことなんだ。

そういう愛を、僕は知ったよ。

そして、ちゃんと誰かと人生を分かち合うこともできた。

アラタ、君が感じたあの静けさの中には、ちゃんと種があった。

いまはまだ芽吹かなくていい。

でもいつか、君の胸の奥で、あの火がやさしい灯りに変わる。

そう信じているよ。

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