第3章 道に名前をつけるということ

3通目の手紙|「ぼくは、何者になれるんだろう」


未来の自分へ

僕は今、進路調査票の前でフリーズしてる。

「将来の夢」なんて、ほんとは何もわからない。

好きなことはある。

言葉を書くのも、ゲームを作るのも、

誰かを笑わせるのも、ちょっと好きだ。

でも、それでどう生きていけるのか、

誰にも教えてもらえなかった。

周りの大人は、安定とか就職とか言うけど、

なんか全部“正解を押し付けられてる”みたいで苦しい。

僕はこのまま「無難な大人」になっちゃうのかな?

未来の君は──ちゃんと好きなことで生きてる?

それとも、夢ってやっぱり夢でしかなかった?



3通目の返事|「夢は“選ばれるもの”じゃなく、“耕すもの”だった」


アラタへ

君の言葉、まっすぐ届いたよ。ありがとう。

僕は、いまゲームを作る仕事じゃなくて、

心を耕す仕事をしてるよ。

「え、なにそれ?」って思ったかもしれないね。

実はね、言葉を書くこと、誰かに伝えること、

そして“人の心の奥を見つめること”──

君の中にあった全部が、いつの間にか一本の道に繋がってたんだ。

君が今、正解がないことに怯えているように、

僕もその道の途中では何度も不安に潰されそうになった。

でもね、夢って、最初から「形」になってるものじゃなかった。

種をまいて、雨にも打たれて、

それでも「やっぱり好きだな」と思い続けたものだけが、

少しずつ芽になっていった。

だから、“君が何者になれるか”は、

今の君の選択の積み重ねで、いくらでも書き換えられる。

僕は、「未来」じゃない。

君が選べる、いくつもの可能性のうちのひとつだ。

でも、もし君がこの道を選ぶなら──

僕は、ずっと君の先で、待ってる。


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