Ⅳ-17.はじまりの物語①
教会を出て、私は鶴嘴を杖代わりに原石まで歩いた。最も巨大な原石のある中央までは、教会から一本の道が伸びていて、歩くのは難しくなかった。
途中で休憩を挟みながら、四〇分ほど歩くと、巨大な壁に辿り着いた。壁のようなそれこそ、最多得票者が鶴嘴を振り下ろす試金石――魂石の原石だった。
『はじめまして。僕がヴィルだ。』
「はじめまして。イヨです」
ヴィルの言葉は私の視界に文字として現れた。
『ずっと見ていたよ。』
「ありがとう。マルトンを止めてくれたのも、ヴィル?」
『あぁ、そうだ。彼は僕を裏切ったから。』
「裏切った?」
『話すと長くなる。まずはその鶴嘴で、魂石を採掘するかい?』
私は鶴嘴を持ち上げ、じっとその尖った先端を眺めた。今、私が採掘に成功しても、もうナナナやマレニ、ヨッカ、そして私自身を救うことはできない。そうでないこの先の誰かを救えることは分かっているけれど、それでも、やるせない気持ちに、鶴嘴を持つ手が力む。
私は鶴嘴を思いきり振り上げ、原石に振り下ろした。
大粒の魂石の破片が落ちて、私の足下に転がった。
採掘はあっけなく成功した。
「ナナナ、マレニ、ヨッカ、オパエツ。やったよ」
私は思わず鶴嘴から手を離した。地面に落ちた鶴嘴が鈍い音を立てる。私は採掘した魂石を両手で包んだ。
『申し訳ないが、現実存在の魂石を、僕が加工することはできない。』
視界に表示されたヴィルの言葉は、滲んで読みにくかった。
喜びと後悔と開放感がぐちゃぐちゃになって私の心をかき乱す。私は兎に角、泣くことしかできなかった。
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