冷たい魔術師の復讐

猫舌です

第1話 人類防衛団

東京渋谷



何十人と隊員が集められた部隊が得体のしれないモンスターと激しい戦闘を行っいた。この世のものとは明らかに違う生物、通称モンスター。その数は戦闘が進むにつれて減少していった。


「よし。これで最後だな」


そう言ってA部隊のリーダーである3級隊員の平山が鬼のような見た目をしたモンスターを炎の槍を飛ばして焼き尽くす。

周辺には隊員たちによって殲滅されたモンスターの亡骸が百近く転がっていた。


『A地点殲滅完了、穴もすでに閉じています!B地点ももうすぐ殲滅完了、C地点は大型のモンスター出現により押されています!A地点の隊員は警戒を怠らず余裕のあるものからC地点の加勢に行ってください!』


A地点の隊員たち全員の耳についているデバイスから報告が伝えられる。


「C地点?遠すぎる!50キロは離れてるぞ。こっちだって今やっと殲滅が終わったばっかだってのに」


平山がそう愚痴をこぼす。実際にA部隊の隊員の殆どは今回の戦闘で消耗している。

続けて戦えるものはそう多くない。


「確かに今回はモンスターの数が多かったですね。この感じだとB地点C地点も同じかそれ以上の数が出現しているようですね。この状況で大型モンスターが出現したのなら相当な被害が出る可能性がありますね。動けるものだけでも加勢に向かいましょう。」


副リーダーの小野隊員がそう分析する。


「ちっ!急ぐしかねぇか。おいオメェら!戦闘する元気があるやつはここにあつまれ!戦闘車に乗って今すぐC地点に向かう!怪我のあるやつは来なくていい、救護団のところに行って傷を治療しろよ!」


「「「了解!」」」


平山の指示に隊員がすぐに動き出す。いつも平山は文句が多いが実力は隊員の中でも上位に位置しており指示も的確なのでこうみえて隊員からの信頼を多く勝ち得ているのだ。


戦闘続行可能な隊員はすぐに戦闘車に乗り込みC地点に向かって走り出した。


********

C地点


C地点ではA地点と同様に百近くのモンスターと隊員が戦闘を行っていた。しかしモンスターは今もなお地面に空いた穴から無数に這い出てきていた。

それに加えA地点とは違い大量のモンスターの後ろに他とは明らかに大きい体躯を持つアックスを持った角の生えたモンスターがいた。


「でけぇ。少なくと2級下位の強さはあるぞあれ」


C地点の隊員の一人が巨大モンスターを見てそう呟く。


「何ビビってんすか。こっちには成瀬2級隊員が向かってきてるんです。俺達は周りの雑魚モンスターを倒してればいいんですよ」


今回の殲滅作戦が初めての新人隊員が余裕の笑みを見せて先輩隊員にいった。


「だが、現状モンスターの数に押されている、成瀬隊員がいつつくかもわからないんだ気を抜くなよ」


「へっ!先輩もビビりっすね。数が多いだけで一体一体はたいしたことないじゃないですか。真正面から突っ込んでくるばっかでまともに攻撃が当たる気がしない」


そう言って新人が隊員が向かってくるモンスターを切り倒していく。

しかし戦場はそう甘いものであるはずがなく、彼の背後に小型のモンスターが近づいてきていた。


「っ!バカ気をつけろ!後ろにいるぞ!」


「え」


先輩隊員の大声でやっとモンスターに気がついたときにはもう遅く、新人隊員にモンスターの鋭利な爪が差し迫る。しかし、その爪が新人隊員を裂くことはなかった。

モンスターの頭は強力な魔力で強化された剣で頭を貫かれて動かなくなっていた。


圧倒的なオーラを放つ若き隊員がモンスターの頭から剣を引き抜きモンスターの血を振り払う。その所作は猛者特有の洗練されたものであった。


「な、成瀬隊員」


「戦場で気を抜くな。油断したやつから簡単に死んでいく。戦場ではいつ何時も周囲の警戒を怠るなよ」


「す、すいません」


新人隊員に圧を含んだ声で忠告すると成瀬は目にも止まらぬ早さでモンスターの大群の中に突っ込んでいった。一見自殺行為のように見えるが実際は成瀬がモンスターを圧倒的なスピードでなぎ倒していっており、みるみるうちにモンスターの数が減っていく。


「つ、強い」


「そりゃそうだ、2級隊員だぞ。身体能力上昇の権能も持っているらしい」


「その権能って何なんですか?」


「隊員の中でもごく一部しか持っていない能力のことだ。能力の発現は先天的なものとも言われているし努力次第の後天的なものだとも言われている。権能を持つものはみんなそれぞれ違う能力を持つが、一つ共通することは、全員が圧倒的な戦闘能力を保有しているということだ」


「なるほど。それで成瀬隊員はあんなに凄まじい身体能力をしているってことですか」

いつか俺もあれくらい強くなれるのだろうか、新人隊員は絶望的な壁を目にした気分だった。




モンスターの数が半分ほどまで減ってきたとおもわれたとき、平山率いるA隊が現場に到着した。


「C地点はここだな。しっかし成瀬が来てんのかよ。じゃあやっぱり俺等いらなかったくねぇか」

平山がまたまた愚痴をこぼす。


「念には念を、ですよ」


「まぁいいか。さっさと終わらせるぞ。おい成瀬!そこら辺のモンスターは俺等がやっとくからオメェはあのデケェのを片付けろ!まだ何が出てくるかわからん、さっさとやっちまってくれ」


「・・・わかった。ここは任せる」


成瀬は平山の案を了承し、大型モンスターのところまで一気に跳躍していった。


「凄まじい身体能力だな。あれが成瀬の才能か。やっぱ2級からは別格だな」


平山が小型モンスターを遠距離から炎を飛ばしてモンスターを焼きながら、の跳躍をみてどうなってんだと呟く。


成瀬は大型モンスタの上空から剣を構えて落下していく。

成瀬の存在に気づいた大型モンスターはその巨体からは想像できない俊敏さで腕を如月に振り抜いた。しかし腕の先にもう如月はおらずモンスターの鼻先で剣を構えていた。直後成瀬は剣を振り抜き巨大モンスターの両目を潰した。


「ギャギャ!ガーーー!!!」


巨大モンスターの絶叫が地面を揺らす。

成瀬はそんなことも意に介さず街の壁を高速で跳躍して巨大モンスターを切り刻んでいく。そして数分もしない間にモンスターの全身に深い傷ができていた。


モンスターは早すぎて目で追うことができない如月を腕を振り回し潰そうとするが成瀬にあたることはなく全身を更に切りざまれていく。そして、成瀬が止まったのが見えた直後、瞬時にモンスターの前に現れ膨大な魔力がまとわれた剣に首が一撃で絶たれた。足元にいたモンスター数十体を潰しながら巨大モンスターが倒れた。



「成瀬が大型モンスターを倒したぞ!このまま一気に小型モンスターをすべて蹴散らすぞ!」


モンスターが倒れたのを確認して平山が他の隊員に指示を出す。

すると成瀬が大型モンスターをを倒したことで士気が高まった隊員たちが一斉にモンスターに突撃しものの数十分で戦いが終わった。





「けが人はこっちに運んでください」

「ふぅ。今日も生き残った」

「なぁA部隊のみんなで飲み会行こうぜ」

「いいな!俺いい焼肉屋知ってんだ。ちょっとばかし高いが行こうぜ!もちろん平山隊長のおごりで」

「何いってんだオメェ。奢るわけねぇだろ。」


戦いが終わりさっきまで戦場だった場所が和気あいあいとしていった。


「ったくあいつら、終わったばっかだってのにはしゃぎやがって」


「いいじゃないですか別に。緊張の糸が切れたんですよ。もう穴が閉じてるのは確認されてますし危険はないですよ」


「まぁたしかにな。よし、オレも帰るか。さっさとおふくろの飯食って寝よ」


「えっ!先輩実家ぐらしだったんですか!」


「何だよ、別にいいだろ」


「いやまぁそうなんですけど、ちょっと意外というか」



モンスターの殲滅が完了して隊員たちが気を抜いているときだった。突如として戦いが終わった戦場に新たに大きな穴が出現した。


『緊急事態発生!!!C地点に新たな穴が発生しました!C地点にいる隊員のなかで動けるものは至急戦闘準備をしてください!魔力測定から見るに、先の穴より強力な個体が出現する可能性あり!』


さっきの大型モンスターより強力なモンスターがが出現する可能性があると聞いて多くの隊員たちが恐怖を感じる。中には逃げ出そうとする隊員もいるほどであった。



「聞いたかオメェら!今すぐ戦闘準備だ。今ここには二級の以上の隊員が成瀬しかいねぇ。強力な個体が出た場合成瀬だけでは討伐困難な可能性がある!増援が来るまで俺達で耐えるぞ!!」


そこへ、平山が喝を入れる。これにより先程まで逃げようとしていた隊員たちが踏みとどまった。



「ありがとうございます。流石ですね。やはりあなたは信頼が厚い」

小野が隊員たちの士気を高めてくれた平山に感謝する。


「これくらいどうってことはねぇ。しかしこんな短期間で穴が出現するか?」


「たしかにな明らかに間隔が短すぎるように感じますね」


「まぁ今はいい、とりあえず俺達で時間を稼ぐぞ」


平山が穴に意識を向けたときだった。穴の中から3体の先ほど成瀬が倒したモンスターより一回り大きいモンスターが出てきた。あのモンスターに対応できるのは成瀬しかおらず、その成瀬でも抑えられるのは1体だけであった。それは状況の危険さは明確にさせるものであった。



「まずいな」


戦場に平山の言葉がこだました。

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