召喚札師シェダ
リックランプの街の至る所には、力をぶつけ合う場がいくつも点在している。
リスナーが相対する場は特に多く、それは
美術館で邂逅しぶつかる事となったエルクリッドと青年リスナー。互いに
「タラゼドさん、
「リスナー専用の戦いの場。内部で行われる戦いの余波を外へ出さないようにしつつ、陣の中のリスナーもアセスが倒された際の衝撃を受けなかったりと、力を競い合う為のものです」
ノヴァが再確認したのは
(エルクさん……大丈夫ですよね)
多少冷静になったとはいえまだ青年への怒りは収まっていない。だが、ノヴァの心配とは裏腹にエルクリッド自身は既に心を落ち着かせ、左腰のカード入れのボタンを外しながら自分のアセスと対話をしていた。
(エルクリッド、ここは僕が出ます)
(ううん、セレッタはまだ。あいつのアセスやカードがわからないし、まずはダインでいくよ)
青年もまた何かを思案しつつたすきがけしているベルトに備わるカード入れに左手をかけカードを引き抜き、エルクリッドと同じように裏面を見せる形で構えた。
「あたしの名前はエルクリッド・アリスター、あんたは?」
「俺はシェダ・レンベルト、財布の事はともかく人が気にしてることをズバズバ言う奴は許さねぇ!」
青年の名前はシェダ。確かに青年としては背は低いものの、エルクリッドも背が高いのもあるのではとノヴァはやり取りを見て感じていた。
とはいえ、シェダが悪人ではないというのだけはなんとなくわかるし、戦う前にエルクリッドには彼の力をみたいとは伝えてはある。
(エルクさん、わかってますよね)
じっと見つめるノヴァの視線を感じたエルクリッドはチラリと見て小さく頷き、彼女の頼みを思い返しながらどう戦うかを構築していく。
(さーてどうするかな……まずはダインに頑張ってもらうとして、と……)
既に戦いは始まっている。互いに裏面のカードを見せ合うのは思考時間、どちらかが手を下げたら終わりを告げ開戦する暗黙の了解である。
始まろうとする戦いを見に人が集まり始めた刹那、エルクリッドとシェダはほほ同時に手を下げカードに魔力と思いを込めた。
「暴れておいでダイン!」
「頼むぜメリオダス!」
エルクリッドのカードより解き放たれるは聖なる円環を纏いしチャーチグリムのダイン。
対するシェダが召喚するのは大型の青い羽根を持つフクロウの魔物。エルクリッドはそれがビショップオウルだと理解し、すぐにシェダの腕の程を察する。
(立派で綺麗なビショップオウル……良い顔してるじゃん)
静かに羽ばたきながら滞空するビショップオウルのメリオダス。翼を広げた姿はダインを上回るが、ダインもまた低く唸って威嚇しながら足に力を込めてメリオダスを睨みつける。
「ダイン、落ち着いていこうね」
「バウッ!」
ダインのやる気は十分、とはいえ実際に共に戦うのは初めての事、どれだけやれるかは未知数とはいえエルクリッドは自分の仲間を信じる事に変わりはない。
かたやシェダもエルクリッドとダインのやり取りを通して彼女が油断ならない相手と悟り、羽ばたきながら自分の方を見てくるメリオダスに声を飛ばす。
「心配すんなって。いつも通りやればいい……でも油断すんなよ」
互いにアセスに声をかける姿は穏やかそのもの、相手を捉え思考しカードに手をかける姿は勇ましく、それを両者ともに感じ入りながら刹那の瞬間に火蓋は切って落とされる。
先制をかけるはダイン。
だがその速さはシェダの目を見開かせ、エルクリッドも想定以上の足の速さには心が躍る。
(すごいよダイン! あたしもそれに応えないとね!)
笑みを浮かべながらエルクリッドはカードを引き抜き、だが反転し飛びかかるダインがメリオダスに上から鋭い爪を突き立てられそうになったのを見て素早くカードを引き直す。
「スペル発動ソリッドガード!」
金属音に似た音と共にメリオダスの爪を赤い膜が防ぎ、その間にダインは距離を取り直し全身の毛を逆立て闘争心を高めた。
これにはシェダも手を強く握り締めながら改めてエルクリッドを認めざるを得ないと悟り、カード入れにそっと手を置く。
「やるじゃねーか、お前もアセスも! 遠慮なくいくぜ!」
「遠慮なんかいらないっての! いくよ!」
二人のリスナーの闘志がぶつかるように双方のアセスが激突する。真正面からダインとメリオダスは一気に相手に向かって頭突きでぶつかり合い、衝撃で少し離れた間もなく甲高い声と共にメリオダスは足の爪先で、ダインは牙の先で相手を捉えながらすれ違い攻撃を掠め合う。
「スペル発動サンダーエッジ!」
すかさずシェダが使用するカードはバチバチと音を立てながらダインへ向かう雷の刃、これを宙返りでダインは避けるが、それをメリオダスは狙って飛翔し急降下をかける。
「ダイン! 回って!」
エルクリッドが飛ばす指示に一瞬ダインは躊躇するも、彼女の自信と闘志溢れる言葉が身体を動かし空中でくるりと回転。それによりメリオダスの爪先が僅かに逸れて掴む事を阻止し、再び距離を取り合い相手を睨み返す。
ここまではほぼ互角、一進一退と言ったところでノヴァも胸の高鳴りを感じ、リスナーとアセスが織り成す戦いの詩に手に汗握る。
「これが……リスナー同士の戦い……!」
何度か見ているはずなのに興奮してしまう。心も身体も熱くなってしまう、間近で見ているからか、あるいは、エルクリッドの凛々しくも楽しげな姿を見てるからか。
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