第3話 ゆる美研究で気付いた、いい日の話
ゆる美研究と名付けて、気が向いたときだけ、自分の気分や体調を観察してみるようになった。
とりたて、特別なことをしているわけではない。
「あれ、今日ちょっと顔がむくんでるな」とか、「なんだか朝から気分が重いな」とか。
ちゃんとノートや手帳に記録してるわけじゃない。
ふと鏡を見て思いついたときに、心の中にメモするだけ。
それをゆるく続けていると、「なんか今日いい感じだ」と思えた日の前日に、共通点や傾向がある気がしてきた。
例えば、「湯船にゆっくり浸かっていた」とか。
「寝る前にスマホを見なかった」とか。
「日記を書いてから寝た」り、「アロマストーンにエッセンシャルオイルを入れた」り、「1輪花をテーブルに飾った」り。
ちょっと間があったり、意識的に気持ちにゆとりの時間をつくっている。
逆に、朝から気分が重い日の前日は、だいたい夜ふかししていて、SNSをダラダラ見ていたり、眠る直前まで仕事のことや過去の嫌だったことを考えていたりする。
間のない生活で、関係ない他人の話を覗き見して、今更どうしようもない自分の過去のことと、考えたところで疲れる未来を想像していれば、明るい気持ちになれるわけもない。
そうか。
いい感じの日は、前日から始まっていたのか。
続けていると、なんとなく、「これとこれを組み合わせた翌日は、朝から気力がある」と気付く瞬間もある。
そういう発見が、けっこう楽しい。
私は分析が好きなタイプだし、こんなふうに「なんで今日は調子いいんだろう」と振り返るのは、小さな実験と検証があって、研究のていをしているから、それが面白くて、ワクワクする。
逆に、いい感じじゃない日も、「じゃあ今日はこれをしてみるか」と落ち込むよりも、前向きな気持ちで過ごすことが増えた。
明るい気持ちは、不思議と好奇心を刺激するから、色々試してみたくなる。
ある日、ちょっとした好奇心のまま、行動することにした。
煌々と明るいお風呂を真っ暗にしたら、どんな感じがするんだろう。
真っ暗と言っても、外の明かりで薄ぼんやりしているだけ。視界はそれなりに良好だ。
ただそれだけのことなのに。
何となく、楽しい。
いつもと違うから。
湯気に包まれ、ひとり静かにぼんやりしていると、呼吸がゆっくり深くなって、身体だけでなく、心がじんわり温まってくる気がした。
その日の夜は、枕に頭を置いたと思ったら眠っていたし、翌朝は、スマホのアラームよりも早く目が覚めたのに、気分が良かった。
これも、あくまで一例。
これが絶対! だなんて、決めなくていい。
無理やり習慣にしなくてもいい。
ちょっとよかったことを覚えておいて、いくつかストックしておいて、気が向いたら、どれかやってみる。
そのゆるさが、今の私にはちょうどいい。
そして、私は、そんな「なんかいい感じだった日」を、ぽつぽつと集めるようになった。
月に1回が、週に1回に変わり、いい感じの日が増え続けている。
いつのまにか、小さな好循環を生んでいるようだ。
いい日というのは、いい感じの日であり、それは前日の私がつくるもの。
無理せず、ゆるゆる楽しめる範囲で行動する。
楽しいから続けたくなる。
続くから、またちょっと楽しくなる。
その繰り返しが今日も出来れば、いいな。
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