第19話 ブック・ダイバーの仕事
宮本家で僕が居候して三日が経ちました。いつも学生服で居るのもなんだろうと美智代さんが僕に普通の服を買ってくれたりして感激して、僕は食事の準備や家の掃除などに精を出していたのですが、その間に迂闊さんは家事もせずに部屋でゴロゴロしたり、パチンコに出かけたりと、言い方は悪いですが社会不適合者のような生活を続けていました。そのせいで僕の中の迂闊さんの印象がドンドン悪くなっていきましたが、ある日のお昼前に迂闊さんが僕の部屋を訪れるなりこう言いました。
「ブック・ダイバーの仕事が入ったけど行きたいか?」
ブック・ダイバーの仕事は僕も気になっていましたし、家事も一通り終わらせて暇だったので僕は迂闊さんについて行くことにしました。
「金が勿体ないから徒歩で行くぞ」
いつもの赤いジャージを着てテクテクと歩く迂闊さん。やはり目立つ格好をしているので隣で歩くのも恥ずかしい気分です。
20分ほど歩くと、とあるビジネスホテルに到着しました。そのホテルには見覚えがあり、多分ですが僕が引き上げられたホテルだと思います。
「えっと、確か203号室だったよな」
そう言いながら受付の人に迂闊さんは「宮本 迂闊だ」と偉そうに言い、エレベーターに乗って二階を目指します。今日もホテルの一室を使用して沈没者を引き上げるのでしょうか。何だか少し手間な感じがしますが、ブック・ダイバーの居住区の近くで人気の無い密室の場所と考えると、何処にでもあるビジネスホテルが最適というのも分からないこともありません。
203号室の前まで来ると、迂闊さんは右手でドンドン‼と部屋の扉を叩きました。
「迂闊だ、早く開けろ」
まるで借金取りです。何でこんな横柄な態度を取れるのか意味が分かりませんが、これもいわゆる多様化の時代ということなのでしょうか?多様化については最近のニュースで聞きかじったぐらいの知識しかありませんが、迂闊さんみたいな人が大量に生まれるとしたら、あんまり良いことの様に思えませんね。
ガチャリと扉が開き、仲介屋さんが姿を現しました。あれだけ扉をドンドンと叩かれたのに、笑って僕等を出迎えてくれたので本当に紳士的な人だと思います。
「迂闊さん、颯太さん、ご足労ありがとうございます。ささっ、中に入って下さい」
仲介屋さんに促されるまま、迂闊さんと僕はホテルの部屋の中に入って行きました。そうして中に入ると、僕がこの間目を覚ました部屋と間取りはほとんど変わりませんでしたが、一つ違うとすれば部屋のベッドに【金の地獄】と書かれた本が置かれていた事です。見た目は普通の本なのですが、何処か禍々しい雰囲気を出しており、僕は直感でこれが異本なのだと感じ取ることが出来ました。
「颯太見てろ、アタシのスマートな仕事ぶりに惚れちゃうぜ♪」
惚れることは全くもって無いと思いますが、迂闊さんのブックダイバーとしてのお手並み拝見させて頂きます。
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