第3話 黄昏の戦い
「後手に回るの好きじゃねぇ‼コッチから行かせてもらうぜ‼」
明らかに物騒なチェーンソー刀こと我儘丸とかいう代物を持って、影壱号に突っ込んで来る宮本さん。先程スポーツチャンバラがどうとか言ってましたが、走り込んでくる様子を見るにかなり身体能力は高そうです。
「オラァ‼」
我儘丸を振り上げ、影壱号に迷わずに振り下ろす宮本さん。しかしながら影壱号はヒラリとそれを躱しました。重たそうな鎧を着ているのに意外にも身軽で僕自身驚いています。
「フンッ‼」
今度は影壱号が宮本さんに向かってランスを突き出し、宮本さんは我儘丸の刀身でそれを受け止めます。
その際にバチン‼と火花が散りました。当り前ですがこんな戦いは初めて見ます。
そこから鍔迫り合いの状態で二人は向かい合いました。
「ほぉ、立派なナリをしているだけあって、結構強いな」
「ふん、当たり前だ。貴様の方は大したこと無いな」
「あぁん‼ぬかせ‼このボンクラ騎士‼」
舌戦で不利になった宮本さんは、チェーンソー刀を振り回しながら果敢に攻めていきます。影壱号はそれをランスでいなしながら、ジーッと宮本さんの動きを観察している様でした。激しい音が図書室に流れる中、僕はふと自分の伸びた影が影壱号に繋がっていることに気が付き、思わず目を背けてしまいました。これは気づいてはいけないことなのです。有耶無耶にしておかないと、またこの学校での生活する際に上手く馴染んで行けないのです。
「はぁ、はぁ……クソが‼」
激しい攻めをしていた宮本さんですが、流石に動き過ぎたのか息が上がって、額からは汗が流れ落ちています。それに比べて影壱号は涼しい顔です。こうなると戦いにおいても有利なのはどちらか明白でした。
段々と影壱号がランスを使わなくなり、体を少し動かすだけで宮本さんの攻撃を躱せるようになってきました。相手を観察して動きに慣れて来た様です。こうなると勝敗すら簡単に予想出来ます。
「フン、もう貴様の相手をするのも飽きた」
そう言うと影壱号は左手に持った盾で、宮本さんを思いっきり突き飛ばしました。ガァアアアン‼と激しい音が鳴り、宮本さんは吹っ飛ばされて、入ってきた扉から図書室飛び出して、廊下の壁にドン‼と背中から激突しました。
「がぁ‼」
悲鳴のような声を上げながら、壁にもたれ掛かり項垂れる様に座り込む宮本さん。我儘丸の刃の回転も止まって、静かな放課後の空間が戻ってきました。
「こ、これでまた二人で一緒に居れるね」
僕が影壱号にそう言うと、影壱号は僕の方を振り向き笑顔でこう答えました。
「はい、あとはトドメを刺せば終わりですね。思った以上に大したことない奴で助かりました」
「えっ?」
トドメを刺す?もしかしてそれは宮本さんを殺すということでしょうか?
「はい主、再びこの者が我等に刃を向けることも考えられます。となれば息の根を止めるしかありません」
僕の思考を読んだのか影壱号はそう答えた後、ゆっくりと宮本さんに近づこうとしていました。
殺す?殺すの?僕が殺すの?僕が僕が……。喉がからからに乾いて、ドクンドクンと心臓の音が聞こえます。僕は今、人間としての一線を越えようとしているのが恐ろしくて堪らないのです。
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