第30話危険

俺はあれから自分が人間なのか、はたまたゲートに問われている間に喰らったモンスターの影響で自分がモンスターになってしまったのか考えていた。




その頃、神阪と桐原が通う高校では三日が経ち通常通り校舎には生徒が溢れ教員によって授業が行われていた。


「じゃあ神阪、この問題答えてみろ」


「え?」


「え、じゃないまたお前は話を聞いてなかっただろ」


「あー、すいません」


教室は笑い声で溢れた。




そうして時間は過ぎて昼休み。


神阪は昼ご飯のパンをかじっていた。


「颯真、また先生の話聞かないで考え事?」


「栞の耳に入るのは早いな」


「相変わらずお二人は仲が良いようで」


周り生徒は昼ご飯を食べながらこの二人に対して穏やかな顔を向けていた。




そんな時だった。


ドン!!


そんな大きな音が鳴り響いた。


そうして身の毛がよだつ感覚に襲われた。


寒気と共に感じたことのない恐怖で俺は動けなかった。


そうして携帯から警告音のアラームが皆の携帯から鳴った。


「何これ?」


「近くでゲートが開いたんだ!!」


そう言うと先生が飛び込んできた。


「皆教室から出るな!!」


「先生、どう言うこと?」


正門でゲートが開いてそこからモンスターがどんどん来てる。お前ら直ぐに机と椅子を度に!!」


そうして生徒と先生がせっせと、机を持ち始めた時だった。


ドンっ!!


鈍い音と共に教室のドアが破壊されてモンスターが教室に入って来て、人間を襲う。


「きゃーーーー」


「助けて!!」


俺は直ぐにGiftを使いモンスターを殺していく。


幸い低級のモンスターで、C級の俺でも倒せるほどのモンスターだった。


「ありがとう」


「早く逃げろ!!」


次々に侵入し始めたモンスターを相手にするがきりがない。


それでもモンスターをなぎ倒してゆく、とりあえず三階いるので一階上まで行きまだ逃げ遅れてない人がいないことを確認して窓を見るとグラウンドに向かって行く生徒が見えて、その周りにモンスターが囲っている。


俺はそれを見過ごせなかった、まだ校内に残って隠れてるかもしれない。


でも目の前に襲られるかもしれない一般人を、守らないといけない。


今の俺には全員を守られだけの力はない、だからこそやらなければいけない。


俺は四階の窓から飛び降りて、グラウンドに向かった。


集団で囲ってるモンスターを殴る。


俺にGift、それは戦えば戦い続ければ身体能力を向上させるものだ。


だから長期戦になればなるほどこちらが有利になる、この数も相手にできる。


「神阪!!」


俺はモンスターを倒し続けてやっと生徒の前までこれた。


「もう大丈夫、俺がなんとかする」


「そうちゃん」


「栞、Gift頼む」


「うん」


俺に体から黄色いオーラが輝く。


力や体力など溢れる程に体の内側から流れる。


そうしておよそ数十体のモンスターが目の前にいる。


殴っても殴っても増え続ける。


後ろには力がなく戦うこともできない人が沢山いる、そんな人達を俺が守るそう思い俺は拳を振るう。


「これはこれは、人間風情が頑張っているね~」


モンスターの集団の後ろから二メートルほどの、人型のサイボーグだった。


「お前が元凶か?」


「そうだ、俺のGiftはモンスターをゲートから呼び出せる」


「はっ、それだけかよ」


「まあ、そうだなでも俺は色んなモンスターを喰ってここまで強くなった」


「どうだか?」


「なら殴って見るか?」


俺は足に力を集中してボスに所まで向かい、力一杯殴った。


だが…。


「これで俺を倒そうと思うなんてやはり人間はゴミだな」


「そんな…」


ボスは俺の右腕を握り骨を折った。


「うっ」


「ゴミはゴミ箱に捨てないとね」


ボスは二発俺を殴って先ほどまでの位置に俺は飛ばされた。


意識が遠のく、吐血して体中が痛い。


「そうちゃん!!」


栞が駆け寄ってくる。


俺はそれを振りほどいて立ち上がる。


「栞、皆頼むわ」


「だめ!!これ以上は」


「ほうほう、あれで死なないか。ゴミはゴミでもハンターって言うのは多少やるみたいだね」


「うるせぇよ、今からお前の顔面殴って殺してやる」


「それは楽しみだね、じゃあ精一杯には精一杯で答えないと」


そう言ってボスの体の周りには、白いオーラが体から溢れ出す。


「嘘だろ…」


このモンスターのエーテルはS級レベルだった。


「真実を知って絶望した?その顔が見たくて本当に楽しい!!」


そう言ってボスは居た場所から消えると一瞬で俺の前に来た。


殴ったのかそうじゃないのか分からない程に早く、拳を受ける。


一発受けた所で俺は意識が消えそうになる。




そうしてボスはもう楽しんだのか、意識のない俺の首を持った。


「楽しかったよ、でももう虫の息だものこのまま殺したほうがいいね」


「そうちゃん!!」


「もうだめだ」


「ハンターはいつ来るんだよ!!」


背後から悲痛な叫びを言う生徒や教師。


「うっ」


「あら、まだ意識が?」


ボスが俺の首を持ってる腕を持った。


「俺は死ねない」


「ほうほう、なんで?」


「守るんだ、皆を!!」


「でも、現実を見ないと。貴方死ぬよ」


「それでも、俺がやらないで逃げることは出来ないんだよ!!」


俺は最後の力を振り絞って右手に力を集中して、白いオーラを乗せてボスを殴った。


ボスの顔は右に傾いた。


「これは効いたよ、でもそれだけ痛くはないね~」


無惨にも今の俺にできることはもうなかった。


「じゃあね、俺が見た中では根性がある人間だったよ。でも所詮はゴミ」


ボスが拳を上に上げたタイミングで、目を瞑った。




その刹那、首には掴まれた感覚もなくあったのはこの前感じた優しく体中にある血と傷が消えていく感覚だった。


「よう、神阪だったか?」


俺を抱えているのは御影さんだった。




数十分前…。


「そろそろ起きてください、御影さん」


「うー、もう十分」


「もうさっきからそのソファーでそればっか。お昼出来たので食べてください」


「はーい」


俺はソファーから体を起こすと違和感があった。


【マスター、ご報告が】


【分かってる】


「どうかしました?」


「いや、ゲートが開いた」


「何処で?」


「この前の高校だ」


「それは大変ですね」


「ああ、数は多いが殆どが雑魚だ」


「なら、在校しているC級の二人に任せれば」


「いや、一体S級のモンスターがいる」


「それなら直ぐに…」


「ああ、お昼はお預けだな」


俺はマイクロポータルを広げてそこに入る。


出た場所は高校の屋上。


「御影さん!!」


「ん?」


「あそこ」


桐生さんが指さした所を見ると生徒や教師の前には、多くのモンスターがいた。


「あそこに傷だらけでいるのって」


「恐らくC級のハンターでしょう」


「そうか」


「そうかじゃいですよ、直ぐにでも行かないと」


「ちょっと待った」


「なんですか?」


「いや、もうそろそろかも」


「何が?」


「もうちょっと見てて」


それからC級の神阪がモンスターを倒すが、S級モンスターにぼこぼこにされていてあと一発で死ぬ所まで見た。


「なるほど、良いね。じゃあ行こう桐生さん」


「はい!!」


神阪のエーテルを追って、桐生さんの肩を触って人差し指と中指をくっついて印を結んでS級モンスターの前に二人で移動した。


神阪を持ってモンスターの前から離れた。


「御影さん、来てくれたんですね」


「ああ、っと君は?」


「C級の桐原です」


「そうか、覚えとく」


「はい、良かったら私のGift使ってください」


「いや、いい。ないと思うけど俺と桐生さんを越してモンスターが行くかもしれないから神阪が全開したらそっちに使ってやれ」


「はい!!」


俺は神阪を置いてヒーリングを使った。


「お前が元凶だな?」


「なに、応援か?」


「ああ、とりあえずサクッとお前を倒さないと俺の昼飯が待ってるんでな」


「飯にされるのはお前だ」


「御影さん」


桐生さんがS級モンスターからこちらに来た。


「どうだった?」


「なかなかやりますね、それから低級のモンスターが邪魔です」


「分かった、桐生さんは後ろのこいつらを頼む」


「はい」


「この数に対して一人で相手しようと?」


「ああ、準備運動には丁度いいだろ」


「準備運動ね、さあ私の下部ども行きなさい」


そうして、低級のモンスターが俺に向かってくる。


「数が居ても意味ないよ」


「強がりを言えるのもいつまでかね」


そうして低級のモンスターが俺に襲う刹那、俺はマイクロポータルで日本刀出した。


「次元斬り」


刀身にエーテルを集中して後ろの校舎に当たらないように、弱めで刀を抜いた。


一瞬でモンスターは跡形もなく消え去った。


「あの数を一振りで、有り得ない」


後ろから桐原がそう言ったがまだ終わってない。


「ぐうっ!!」


「おいおい、余裕ぶっこいてた割に一発で吐血とは弱いな」


「馬鹿な、俺は沢山モンスターを喰って強くなったはずだ!!」


「それで強くなれるなら世話ないよな、どうだ、下等とか言ってた人間に此処までされる気分は?」


ボスモンスターは吐血や腕が斬り落とされてた。


「ここは撤退だ」


「逃げるのか?」


「人間の言葉を使うと戦略的撤退だ」


「そうか、でも簡単に逃がすと思うか?」


「馬鹿め、俺はゲートを操れるんだ」


「そうか、なら‘出てこい‘」


そう言うとマイクロポータルからグリムコードを聞いた、吸収したモンスターがどんどんと出てくる。


「なんだその黒いモンスターは!!」


「さあ、出番だよ皆」


【マスターの為に我々は戦う!!】


「うん、よろしく」


そうしってグリムコードで現れたモンスターは、S級モンスターが呼び出したモンスターと戦いだした。


「くそ!!俺は生き延びるんだ」


そう言ってS級モンスターがゲートの中に入る寸前で、俺はS級モンスターの首根っこを掴んで反対方向に投げ飛ばした。


「馬鹿な、あの距離を一瞬で」


「お前の相手は俺だよ」


そうして俺は力一杯殴り飛ばして、そうしてまた瞬間移動をして地面にS級モンスターの顔を埋めるくらいに殴った。


「あがっっ」


S級モンスターは白目で気絶していた、そのまま体が段々白い粒子となり消えていく。


そうして全身が消えやっと消えた。


「終わったのか?」


「おお、神阪と桐原だっけ?」


「はい」


「神阪は傷はどうだ?」


「おかげさまでなんとか」


「そうか」


「御影さん」


「なんだ?」


「貴方は一体何者なんですか?」


「俺か?」


「はい、Giftも級も分からないし調べても名前も年齢も出てこなくて」


「勝手に調べたのか、全く」


「すいません、でも謎が多すぎるので」


「まあ良いけどさ、色々あって俺の情報は一切遮断してるんだ」


「そうなんですね」


「ああ、だから俺のことは名前だけな」


「分かりました」


「あの、御影さん」


怪我も治った神阪が話に入って来た。


「あの、今度修行付けてくれませんか?」


「良いけど途中で投げ出すなよ~」


「根性はあるので大丈夫です」


「そうかそうか、でもその前にやらないといけないことがあるな」


「なんですか?」


「先ずは協会に行って級の再検査をしな」


「え、それってどう言う?」


「まあとりあえず、楽しみは取っときな」


なんだか嬉しそうにしてたけど、正式な検査をしないでぬか喜びさせるよりかはましだろう。




程なくして、ハンター協会の職員と警察が来て事情聴取を生徒や教員が受けていて、俺はハンター協会に向かった。


「姫野さん、二人は?」


「神阪君と桐原さんは検査を受けて怪我は無く無事でした」


「そうですか」


「はい、それから神阪君に関してなんですけど」


「どうかしました?」


「級の再検査を言われた通りにしたんですけど、本当はCからBに上がるはずなんですけど、エーテルなど色々検査を行ったんですがエーテルだけを見るとA級なのですが」


「まだ実践が足りないと?」


「はい、なので暫くはB級と登録するんですが二つ、御影さんにお願いがあるんです」


「なんですか?」


「神阪君に修行を付けるとお願いされたとか?」


「ええ、まだ何も決めてないですけど」


「場所はハンター協会が所有している、体育館で構わないので是非ともお願いしたいのです」


「分かりました、それでもう一つは?」


「神阪君に現場に連れて行ってくれませんか?」


「良いですけど、俺が担当する現場には荷が重いのでは?」


「それはなんとか、御影さんのお力で」


「えー」


「嫌そうですね」


「そりゃ、まあ」


「後進の育成だと思ってなんとか?」


「後進ってまだ俺バリバリの現役ですし、まだ二十代前半なんですけど」


「まあ、なんとかお願いできませんか?」


「まあ考えときます」


「ありがとうございます」


「はい」


正直面倒くさいし、でもまあ面倒ごと押し付けられると思えば良いかと思った。


「それで例の生徒は?」


今ご家族にも電話で説明して来てもらってます。


「そうですか」


「はい、それでGiftの方は?」


「まあ、理論上は可能ですしモンスターにはやりましたが、人に使うのは無いので必ず成功するとは言えないですね」


「そうですよね、まあご家族には到着してからまた詳しく説明するので結論はそれ待ちですね」


「そうですね」


「それから学校の方についてですが…」


「御影さん!!」


勢いよく部屋の扉を開いたのは神阪と桐原だった。


「聞いてくださいよ、俺B級に上がったんです」


「聞いたよ、おめでとう」


「はい、じゃあA級の話も?」


「ああ、俺次第だと」


「はい、お願いします」


「うん、とりあえず任務では俺が見てるから大丈夫だけど修行では死ぬかもしれないからね」


「え?」


「まあそれくらい大変ってことだよ」


桐原がフォローしていたが正直死ぬほど追い込むつもりでいた。


「まあ、加減はするけど現場を相当して修行するから」


「はい」


「お話中すいませんが、続けても?」


「あ、すいません」


それから二人が出て行こうとした。


「姫野さんが聞いても良いなら二人も聞いて行きな」


「良いんですか?」


「うん、まあ関係なくはないからね。姫野さんは」


「確かにお二人にも関係ある内容なので構いませんよ」


「じゃあ」


二人は会議室の椅子に座った。


「では報告です。まずゲートが開いた要因ですが二つあります。ではせっかくなので神阪君と桐原さんは何故ゲートが開くのかは分かりますか?」


「えっと」


神阪はあんまり頭を使うのが苦手そうだったが桐原は理解していた。


「周囲にあるエネルギー、つまりエーテルの周波が大きく重なった時に開くですよね?」


「はい、まあまだこれと言った原因は一つではないのですが今有力なのはそうです」


「栞凄いな」


「そうちゃんはこれからまだまだ成長するんだから、頭に入れときなさい」


「あ、はい」


「では続けます、お二人はエーテル樹と言うのは知ってますか?」


「エーテル樹?」


「海外に多く存在するゲートを強制的に開く、危険区域に設定されてる場所に育つ木だと思います」


「そうです、今回調査をしたら高校の校内にある園庭に数個、樹の種が発見されました」


「え?」


「なんでそんなものが?」


「分かりませんがまだ育つ前に除去したので、安心してください」


「俺も不穏なエーテルを感じたから間違いないな」


「ですね、今回の報告も現場で御影さんが気づいてくれたので初期段階で我々も解決できました」


「やっぱり御影さんは凄いですね」


「おだてる前にお前らハンターなんだから気づけよ」


「すいません、何も気づかないで」


「すいません」


「まあ良いけどさ、重要なのはその樹の種がなんであそこにあるかだ」


「確かに、犯人に心当たりは?」


「私達ですか?」


「はい、日本では種の持ち込みは法律で禁じられてますなので日本にあること自体あり得ないんです」


「じゃあ無いはずの物が学校にあるのは不自然ですね」


「はい、何であるかか」


神阪も考え始めた。


「無い頭で考えてもしょうがないぞ」


「ちょっと馬鹿にしてます?」


「現に勉強できないでしょ、そうちゃん」


「高校入学のパスできたし良いだろ」


「そう言って、この前にテスト赤点だったじゃん」


「脱線したが、今は情報が必要だ。今の所種を撒いた犯人に関して何も分からないからな」


「ですね、お二人も気になることがあれば何でも言ってください」


「はい」


「先生とかに説明したんすか?」


「はい、ただ今後協会の職員が定期的に検査に行くことが決まりました」


「じゃあ安心だ」


俺はこの種のことに気づいて高校から協会本部に着くまで、ずっと考えていたことがあった。


でも、あんまり人に話して不安を煽ることはしなようにと思って話さなかったが情報共有は大切だと思い話してみることにした。


「一つ仮説がある」


「なんですか?」


「これはまだ推測の域を出ないから、神阪と桐原にだけ話すからそれ以外の人間には話すな」


「はい」


「俺は前回結界を張って暴れてたモンスターの件と今回の種を撒いた件に関係性がないとは思ってない」


「では人為的に誰かが引き起こしたと?」


「はい、なので姫野さん始め協会にはこのことは共有していただきたい」


「分かりました」


「でも、種の件は分かりますけどモンスターの件が人為的だと言うのはどう言うことですか?」


桐原が疑問をぶつけて来た。


「今日本や海外でゲートが頻繁に開いているしゲートブレイクが起きてるのは知ってるか?」


「はい」


「それが人為的に誰かまたはモンスターが引き起こしてる可能性もあると言うことだ」


「そんなことが可能なんですか?」


「今回お前らがのとこに来たモンスターがゲートを操れると言っていただろ?」


「そう言えば…」


「だから人為的にそう言うことが可能にできる奴がいる可能性もあるし、なんならそっちの可能性の方が現実的で説明がつく」


「なるほど、それでもう一つは?」


「尋木有紀と言う生徒がいるでしょ?」


「はい」


「彼女はアノマリーです。日本では虚光と呼ばれています」


「それってエーテルを放出できない人のことですか?」


「え、どう言うこと?」


どうやら神阪は何も知らないようだった、これから先が思いやられる。


「ハンターとか覚醒者はGiftで一般人より多いエーテルを使いますけど、Giftがない一般人がたまに存在してしまうんです」


「じゃあほっとけばエーテル爆発しちゃうじゃないですか」


「だから、協会にはエーテルを放出する機械があるんです」


「でもそれって、成功率があまり良くないって聞いたことがあるんですけど」


「そうですね、成功率は五分五分です」


「なんでですか?」


「エーテルはどんな人間にもあります、運動するにはエネルギーを使うしそれを補う為に食事や睡眠が存在するでしょう、そんなエネルギーを全て抜くと最悪死んでしまいます」


「そんな、それ以外に方法はないんすか?」


姫野さんがスマホを見た。


「尋木さんのご家族も到着されたので、話しは全員が集まってからにしましょう」




それから雑談などをしていると、尋木有紀の家族と本人が会議室に入ってきて椅子に座った。


「では、お話を始めます」


「あの、本当に他に方法はないんでしょうか?」


尋木有紀の父親が心配そうに聞いた、父親だけでなく母親も不安そうだった。


まあ当然と言えばそうだが。


「もう一つだけ方法がなくはないんですが」


「なんですか?」


「それは俺から」


そう言うと全員の視線が俺に向かった。


「この方法は協会にある機械でエーテルを吸うよりはましになります」


「教えてください」


「約束が約束を守って頂けるのなら」


「なんでもします」


「じゃあ書類にサインをお願いします」


それから俺と姫野さんを抜く他の人間に書類が配られた。


「俺らもですか?」


「当然です、神阪君と桐原さんもこの秘密が守れないのなら協会から除籍されます」


「そこまで重要なんですね」


「はい」


全員が書面を確認してサインをし終わった後に俺は説明を始めた。


「先ずは自己紹介、俺は御影真一と言います。そして級はZ級でGiftはイマジン。簡単に言うとイメージを具現化し現実に持ってくるものです」


「それって最強じゃないですか」


「それにZ級なんて」


桐原と神阪が同時に言った。


「まあ覚醒した方法も様々なことも極めて、稀で御影さんの意向もあって御影さんの存在自体秘密なんです」


「じゃあこの前会見で新しいZ級って…」


「うん、俺だ」


「まじか」


「まあ俺が秘密にしたいってことは置いといて説明だな」


「お願いします」


「はい、ではまずこの前にエーテルを吸うモンスターがいてそれで俺もそれを似せて新たなGiftを作りました。あくまで暴走しそうなエーテルを一時的に引き取って、俺の中で安定させて外に放出する仕組み。


……つまり、簡単に言えば“暴走寸前の命の熱を冷ますGift”ってところです」


「それは成功率はどのくらいなんですか?」


母親が言う。


「まだモンスターにしか使ってないので、確実とはいきませんが制御が確実にできない機械よりかは俺が調節してエーテルを吸う方がましだと思います」


「まあ言い換えれば医療にも絶対はないし、工場などの仕事を考えれば結局最後は人だと言うことを考えてもらえば想像できるかと」


姫野さんがフォローしてくれたが、やはり安心はできてない感じだった。


まあそうだ、まだ人間に試したこともないばかりか、自分の子供の命をこんな若い人に託すなんて親や本人からしたら不安が消えることはないだろう。


「時間は正直、余裕はないですが此処で少し考えることもできます。現に御影さんも此処にいますし機械も此処にありますので少し考えてもらっても構いません」


姫野さんがそう言うので今日は帰るのは遅めかと、桐生さんに連絡を入れようとした時だった。


「御影さんにお願いします」


「え?」


「有紀、良いの?」


「うん、だって成功率が半分の機械に任せるより人の方が任せられるし、それにこの人は私達を助けてくれた」


「分かりました。でも機械と同じで失敗すれば一生ベットの上で生活することも、病院から出れないし、意識が戻らないこともある。それでも俺に命を預けることが出来ると言うことですか?」


「はい、お願いします」


有紀と言う女子高生からは決意を感じた、医者以外に自分の命を懸けると言ったのだだからこそ将来ある少女を助けなければいけない。


「分かった、じゃあ早速やろうか」


「え、此処で?」


「うん、何処でも出来るし早いうちにやった方が良いでしょ」


俺は少女の目の前に立ち手を翳す。


「出来なくても良いけど、頭に全部のエネルギーを集中して」


「エネルギーですか?」


「まあとりあえず集中する感じで」


「分かりました」


それから俺は、目の前にいる少女のエーテルを察知して吸いとる。


少女から白いオーラが段々と俺の手に収まる。


きりが良い所で手を収めた。




「はい、終わり」


「え、もうですか?」


「うん、とりあえず一般人が使うエネルギーは残したしそれ以上吸い取ると死んじゃうから」


「本当に終わりですか?」


「うん、一回吸い取るともうこれ以上増えることはないよ」


時間にすると一瞬だったが見てみても、必要以上のエーテルはもう少女にはない。


「念のために測定しますね」


姫野さんが持っている簡易的な測定器で測っても、異常はなかった。


「本当にこれで大丈夫です」


親子はため息をついて安心していた。


「それじゃあ一日は様子を見て安静にして何かあれば、電話ください」


「はい、ありがとうございました」


少女と親子が部屋を出よとした時に俺はふと思い出したことがあった。


「そうだ、これ持ってて」


俺が少女に渡したのはストーン型のストラップだった。


「何ですかこれ?」


「もし、エーテルが増えてしまってもこれが吸い取ってくれるんだ」


「この石がですか?」


「うん、これを持っていると。神阪」


「はい?」


「俺をGiftを使って力一杯殴れ」


「はい?」


「良いから」


「分かりました」


神阪は立ち上がって、俺の目の前に来て神阪が俺を殴った瞬間に拳は俺に当たらないで結界が張られて吹き飛んだ。


「痛って~」


「これで殴られても大丈夫なように攻撃を受けたら、同じ威力で攻撃を跳ね返す結界が付与されている」


「へ~」


「まあお守りだと思って」


「ありがとうございます、肌身離さず付けます」


「うん、それじゃあ」


「はい、お疲れさまでした」


それから少女と親は部屋を出て行った。




「結界があるなら言ってくださいよ」


「言ったら意味ないだろ」


「それはそうですけど」


「まあ試作品だからまだまだ改良の余地ありだがな」


「でもこれ売ったら売れるかもしれませんね」


桐原がそう言った。


「いやいや、そんなに大量に作れるものじゃないから」


「御影さん、作って溜まってるなら是非とも協会に」


「姫野さんも冗談やめてください」




それから暫く談笑して、神阪君と桐原は出て行った。


「姫野さん、桐生さんが探してるモンスターの調査はどうなりました?」


「まだ何も情報はありません」


「そうですか」


「はい、どうですか桐生ハンターとの生活は?」


「まあ快適です、なんでもしてくれるし」


「そうですか、我々も調査は続けてますがまだなにも。もしかして何か引っかかることで?」


「情報がない上で考えるのは危険ですが、ホロウレインよりも強いモンスターがこの一件に関わっているとしたらやばいなと」


「なるほど、この情報はまだ世間には出してないですがもし、御影さんの考えが当たってるとしたら急がないといけませんね」


「はい、お願いします」


「はい」




それから、家に帰った。


「おかえりなさい」


「ただいまです」


「どうでしたか?」


「解決してきました」


「そうですか」


「はい、それから桐生さんが言ってたように姫野さんからストラップは余ってたらくれって言われましたよ」


「そうでしょう、あんなに簡単に身を守れるものがあるなら必要な人は多いでしょう」


「ですね、それから一応例の件聞いて見たんですが情報はないと」


「そうですか」


「はい」


「急ぐ必要はありませんが危険を放置するわけにはいきませんしね」


「ですね」

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