第7話「本当の気持ち」

「助けて、私これから死ぬ」


このLINEで俺は全て思い出した。

亜希はこの後自殺をする。

結果、未遂に終わり病院に搬送され一命は取り留める。


無事だとしても、一度目の人生では元恋人だった

亜希を見過ごすわけにはいかなかった。


「ごめん、優依…俺行かなきゃいけないところあって」

「え、今?」

「うん、ほんとごめん」

「わかった…」


俺は願ってもいなかった大チャンスを捨てて

亜希のマンションの屋上へと向かった。

到着すると、そこには無気力な亜希がいた。


「お前さ、責任取れよ。こんなチャンスなかったのに…!」

「何言ってんの?てかなんでここわかったの?」

「え、?いやその死ぬとか急に言うから飛び降りしかないかなって」

「そっか。なんで来たの?」

「いや死んじゃダメだろ」

「私さ、バスケ部の女…」

「いじめられてんだろ?」


俺は話出そうとする亜希より先に答えた。


「え、知ってたの?」

「見てたらわかる、お前ご飯食べれなくなってんだろ?」

「きもっ、そんなとこまでわかってるんだ」

「とにかく大丈夫だから、死ぬなお前」

「何その自信、なんかムカつく」

「どれだけ1人になろうが俺が親友でいてやるから」

「うん…ありがとう」


亜希は泣きながらいじめの全てを話してくれた。

まぁ前にも聞いたことあるからただの再放送なんだけど

泣きじゃくる亜希をどうしても見捨てることはできなかった。



次の日—



「おはよう」


優依に声をかけるも俺のことをガン無視してきた。


「怒ってる?」

「…はい」

「いや、ほんとにごめん」

「どこにいったのかも知らないけどさあのタイミングで行かなきゃだったの?」

「ごめん…」

「もう知らない」


険悪な雰囲気が流れる中、優依は俺に冷たげに

「どうせ亜希でしょ」と言った。


「なんで?」

「亜希からLINEが来た。ごめん借りてるって」

「そっか」

「何あいつ、ほんとにやだ。大智も大智だよ!」

「ごめん、あいつ死ぬかもとか言うからさ」

「じゃ、私が昨日死ぬって言ったら私を選んでくれた?」

「お前さ。なんのために俺が戻ってきたと思ってんだよ!!!」


思わず、その言葉を口にしてしまった。


「意味わかんないこと言わないで」

「いや、その…」

「しばらく一緒に帰ったりするのもやめよ。亜希に行ってもいいよ」

「だから違うって」

「ごめんね」


優依は泣きながら1人で教室を出ていった。


「ねぇ大智、一緒に帰ろ?」

「あぁうん」


何も知らないとはいえ、思ってはいけないかもしれないが

少しだけ亜希に苛立ちを覚えてしまった。


「ねぇ優依となんか喧嘩したの?」

「あ、いやうん」

「私のせい?昨日責任とれとか言ってたし」

「そんなことないよ」

「ねぇ私責任取れるよ」

「え…?」

「私が大智の事支えたいの」

「あ、いやそれは…」

「あんな女忘れて私にしなよ」

「え…」


告白の言葉も一度目とは違う。

何より違うのはそのタイミングでキスをされた。

その瞬間雷が落ちてしまった。



「ダウ!俺どうなった!?」


ダウの方を見ると少し元気なさそうに首を横に振った。

一体何が起きたんだ…

時間が動き出し、棺桶にいる優依の姿を確認した。

だけど大きな変化は特に感じなかった。


だけどすぐに気づいたその大きすぎる変化に—


「大智、拓也ぐずってるから一旦外出るね」


隣に目をやると1歳児ぐらいの子供を抱えた亜希がそこには立っていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る