第6話「見たことない世界」
見たこともない世界…
ダウの言葉に気づかされた。
確かにそうだ、俺は元の生きてきた世界では
優依の事大好きだったし大親友だったし恋人のようなものだったけど
正式に告白なんてしたことないし
ちゃんと俺は彼氏を出来ていたのだろうか…
未来を変えれたことは嬉しいことだけど
過去からこの瞬間までの期間は飛んでしまうから
自分がどういう彼氏だったかすらもわからない
俺は一体あいつに何をしてやれたのだろう
「なに考えてるの?」
ダウが俺に声をかけてきた。
「いや、俺が知らない間の期間、俺はちゃんと彼氏やれてたのかなって」
「それを考えれる時点でいい彼氏だったはずだよ」
「そうならいいけど」
「展開がわからない世界でも大智がちゃんとしてれば大丈夫だよ」
俺に優しく微笑むダウの笑顔はとても安心するものだった。
「じゃ行くね」
ダウが指をパチンと鳴らし、目を覚ますと俺は高校にいた。
高校…?一体高校時代に未来を変えるような選択なんて何があったんだろう
目の前には高校ぶりに会う友達の伊吹がいた。
「お、伊吹!久しぶり!」
「いや、確かに春休みの間会ってなかったけど久しぶりではないだろ」
思わず言ってしまったがタイミング的にもなんとか誤魔化せた。
そうか、今日は春休み明けの学校か
高二になる瞬間ってこと…?
1回目の人生ではもう優依と縁を切っている。
理由は簡単なことだった。
俺のダサすぎる嫉妬が原因…
当時、優依に好意を持っていた男性がいてそいつは優依と仲良くて
俺は負けたと思っていた。
だけど、本当はそいつは優依の事を遊びとしか思っていなくて
それを優依に伝える友達の悪口を言われたと思った優依が
「もう二度と会いたくない…もう二度と私の目の前に現れないで…」と
俺に言い放ちそれから俺らは縁を切った。
縁を切ってないあいつとの高校生活は一体何をすればいいのだろう
「大智!クラス何組だった?」
クラスのことなんかどうでも良かった俺にウキウキで優依が尋ねてきた。
「えっと俺は…7組だったよ」
「え、一緒じゃん!」
そんなことわかってる
高二ではクラスが一緒で縁を切っていて一言も口を聞かないから
地獄だったのを覚えてる。
どれだけ考えてもわからない—
一体これから起こる何が未来を変えるかもしれない瞬間なんだ
俺は半ば強引に腕を引かれ俺の新しい教室である2年7組の教室へと向かった。
一度目の人生で少しだけ話したことがあるクラスメイトや
二回目なのにまじで名前すらわからないような子もたくさんいる
その時だった—
「大智!同じクラスだったんだ!」
明るく俺に声をかけてくれた女の子がいた。
一体誰なんだ…声の方を振り向くとそこにいたのは
俺の高校時代の元カノである亜希だった。
「亜希!久しぶり!」
「いや、昨日も帰りすれ違ったじゃん」
俺と亜希は同じバスケ部で一年の時からよく絡むことがあった。
そうか、この世界ではまだ俺は亜希と…
これだ—
人生が変わるかもしれない場面
二度目の人生では、俺は亜希と付き合わない。
そう、一度目の人生では
俺が優依を失って元気ないのを常に亜希が支えてくれた。
高校生活の俺のそばには常に亜希がいた—
亜希と付き合ったのってそれ以外にも理由があった気が—
「何ぼーっとしてんの」
考え事ばかりしている俺に優依が話しかけてきた
「あーちょっと女の子のことで…」
「おい、お前の女は私だろって」
こんな話をできるとも思ってなかった高校時代だった。
「帰るか」
「うん!たっくんの所寄ってこうよ」
優依と普通に仲良いまま過ごしてきたこの世界線の俺にとって
こんなありきたりの会話はなんてことないんだろうけど
今の俺に全ての会話が新鮮でかつ俺の心を全ての言葉たちが刺していった。
「ねぇその後さ、うちこない…?今日お母さん友達と旅行で…』
優依の家はシングルマザーってことは
「え、ふたりきりってこと!?!????」
「うるさい」
そうして俺は高鳴る胸の音のせいでたっくんの話なんか一ミリも入ってこないまま
たっくんの店を後にし優依の家へと向かった。
そういや、こっちの世界では俺は一度も優依の家で
二人きりなんかなかったな…
「さてと、お茶でいい?」
「うん」
何故だかよそよそしくなる俺を気にもせず優依はお茶を片手に俺の横に座った。
「抱く?」
お茶を吹き出したなんてことはわざわざ言わなくてもわかるだろう。
「え、その気ないの?」
「いや、ないって言ったら嘘になるけど…」
「じゃ、抱いてよ」
「えっと…」
「私、嫌なら呼んでないよ、わざわざ誰もいない部屋に。ほんと意気地なし」
そう、こいつの言うとおりだ。
意気地なしだったから現実世界での俺はあんなに後悔をしてしまうんだ。
そっぽむきゲーム機を立ち上げようとする優依に俺は言った。
「しようよ」
「えっ、どしたの急に」
「意気地なしじゃないって証明したくなった」
「ふーん。いいけど」
そのまま俺らは時の流れに身を任せ、キスをした。
こんなにも緊張したのは初めてかもしれない。
緊張がバレないようにと誤魔化しながら俺は体を委ねた。
「好きだよ」
「えへっ私も」
ベッドに向かったその時俺のLINEが鳴った。
「助けて、私これから死ぬ」
その時全てを思い出した。
亜希はこの日、自殺未遂で運ばれる。
そう、それが俺らのきっかけだったんだ。
この世界でも亜希が繋がってくることを俺はまだこの時
気づけていなかった。
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