第8話「もう一度君に」
横に目をやると子供を抱えた亜希がいた。
「お前、それ誰の子供だよ…?」
「は?何言ってんの?優依が死んで頭おかしくなった?」
「そんなのいいから誰の子供だよ!!!」
「なんで声荒げてんの…あんたの子供に決まってんでしょ」
これでまた振り出しだ…
俺の頑張りはどこに行ったんだよ。優依とせっかく付き合えたのに…
俺はバカすぎる。
また時が止まり真っ白な空間に—
「ばーか」
「ほんとだよ、何してんだろ俺」
「大智が諦めちゃ私もう応援しないからね!?」
初めてダウが怒りながら俺を鼓舞してくれた。
「あっちに戻ったら亜希ちゃんと付き合ってるんだろうね」
「どうすればいいんだろ」
「それは大智にしかわかんない、優依ちゃん取り返してきな」
ダウがまた指をパチンと鳴らした。
「起きて!大智!」
「優依!?」
「は?私だけど」
「あ、ごめん亜希」
「土曜日だからって泊まり来て大体ヤってすぐ寝るとか彼氏失格すぎ」
うわ…もう取り返しつかないじゃん
俺どうすればいいんだよ…
「あ、そうだ大智今度の修学旅行、班自分らで組んでいいらしいよ」
「あー修学旅行だっけもうすぐ」
「うん、楽しみ」
一度目もこいつと組んだしわかんねぇよ
あぁ中学の修学旅行、優依といけて楽しかったな
何が未来を変えれる可能性のある選択だよ。教えてくれよ…
でももう俺には時間がない
「亜希、ごめん別れてほしい」
「無理、優依が好きって事でしょ?」
「いや、無理っていうか元々優依と付き合ってたわけだし」
「優依にも聞いたよ、別れたって。だから私と正当に付き合ってるわけだし」
「いや、それでも…」
「死んじゃうかも…捨てられちゃったら」
俺は一体どうすれば、優依とよりを戻せるんだ
このままだと本当に時間がない。
雷の落ちるタイミングも予測はできないし。あぁ、もう
そのまま時間は過ぎていき学校のある月曜を迎えた。
自分の中では別れたわけでもない優依と顔合わせるのが気まずい…
「優依!おはよう!」
「おはよ…」
「あのさ、俺…」
「何?話しかけないでほしい」
その冷たい優依の態度を見て俺は絶望を感じた。
過去にまで戻ってきて何をやってんだろって。
それからというもの、どこへ行くにも亜希は一緒だった。
もはや自分だけの時間というものすら俺にはなかった…
一人になれるのは学校から家への帰り道だけだった。
その時だけ優依のことを考えることを許されたかのような気分だった。
「大智先輩!」という声がし、振り向くとそこには珠理奈がいた。
「先輩!優依先輩と帰んないですか?」
「いや揉めちゃったし…」
「あ、なんか言ってたわ。話すなって言われたって」
「は?どこで?」
「え?学校で」
「え、珠理奈同じ高校だっけ?」
「何言ってんすか、こわっ」
「あ、いやごめん俺高校時代優依と仲良くないから珠理奈が一緒なの知らなかった」
「は?高校時代ってなに。今じゃん」
「あーえっとそうだね」
「変なの」
「あ、てか誰が言ってたの!?」
「私もわかんないんです。なんか大智先輩とられたとかなんとか」
「やっぱあいつが言ってんのか…」
亜希だ…間違いない
どうしよう、あれよあれよという間に修学旅行前日となった。
俺は教室で一人佇む優依に声をかけた。
「お前さ、自主研修どこまわんだよ」
「ぼく明日の場所…って言ったら笑う?」
「いや、別に」
「一人で行こうかな」
「ぼく明日?」
「うん」
「俺も行くよ」
「亜希がいんじゃん」
「いいよ、あんな奴…俺が本当に好きな…」
「逆に迷惑。話さないでって言われてるしもう近づかないで」
俺はおかしくなるほどに何か方法はないかと考えた。
ようやく一つ思いついたんだ。
「わかった、じゃあさ、かくれんぼしようぜ」
「は?」
「俺が本当に思ってるならお前の行きたいところわかるだろ」
「わかるわけないじゃん」
「余裕だよ、お前は一人でそこに行ってて」
「見つけに来るってこと?」
「そう、もし見つけれたらお前の本当の気持ち聞かせて」
「…わかった」
こうでもしないと未来は変えられない。
失敗するかもしれないけど口約束かもしれないけど
今の俺には十分だ。
って言ったけどどこなんだよあいつの行きたいところ
とことで俺に頼れる相手はこいつしかいなかった。
「なんで私なんですか!」
「珠理奈しかいないんだよ!知らない?あいつの行きたいところ」
「知らない!なんか大智と賭けしてるからあんたにも言わないって言われた」
「はぁ???何あいつ!何賢くなってんだよ!」
俺の慌てぶりを横目に携帯ばかり触っている珠理奈にむかついた。
「お前さ、可愛がってくれてる先輩がさ困ってんのに何携帯ばっか触ってんだよ」
「いや、優依先輩がなんか大事なキーホルダー壊れちゃったって落ち込んでたから」
「だから?」
「いや、探してあげてんの!メルカリとか!」
「あんの?そんな簡単に」
「いや、見つかんない」
そんな不毛な会話だけをし、ついに修学旅行どころか
約束の自主研修当日になってしまった。
全く思いつかん、まぁこう言ってて結局ぼく明日だろ。
俺は千本鳥居に向かうことにした。
目的地に向かう最中、これまでの事を振り替えてしまった。
あいつの中学の最後の大会に行ったり、体育祭の嫌な思い出を塗り替えたり
中学の修学旅行だってそうだ。
元々は一緒に回れてすらない。それを俺は一緒にあいつの行きたかった
映画の撮影地行ったり半分ずつのキーホルダーを買っ
『それだ!』
俺は急いで目的地を変更した。
あいつは必ずいる、そう信じその場所へと向かった。
そこは中学の修学旅行の日に二人でキーホルダーを買ったあのお土産屋
中に入ると優依はいた。
こちらを見て少し驚きそして少しだけ微笑んだ—
「わかってるっていう割には遅かったね」
「混んでた」
「あんた歩きでしょ」
「いいじゃんどうでも」
「なんでわかったの」
「俺のキーホルダー見てわかった」
そう、買ってからずっと持ち歩いてたからボロボロになっていた。
もし、同じだけ持ち歩いてたとするなら珠理奈が言っていた
『大事なキーホルダー』は俺と買ったやつだって思ったんだ。
「ボロボロじゃん」
「ずっと大事に持ってるからね」
「私も、大事にずっと持ってたら逆にボロボロになっちゃった。紐取れちゃうし」
「新しいの買お。お揃いの」
「ううん、なんか来る気がして。もう先に頼んだんだ」
「え?」
すると店員さんは奥からあの日買ったやつと同じやつの新品を持ってきてくれた。
「同じやつがいい、いいよね?」
「うん!」
俺らは新しいのにすぐに取り替え微笑みあった。
「正解したから教えてあげる」
「え?」
「一緒に言いにいこ。亜希に大地を返してって」
涙ぐみその言葉を発す優依を俺は強く抱きしめた。
そして俺らは二人で亜希の元へ向かった。
「亜希、ごめん。やっぱ私、大智のこと好き。大好きなんだ」
「わかってた…ごめんね意地悪して」
「え」
「大智にこんなに愛してもらえる優依が羨ましいよ」
「亜希もきっと出会えるよ」
「だといいけどね、こんな嫌なことしたけど友達でいてくれる?」
「もちろん」
二人が笑い合った瞬間に大きな雷が落ちた。
「ダウ!!!」
「もううるさいなー!自分で見なよ」
葬儀は行われている。そして隣には亜希がいた。
「え、お前俺と結婚したの?」
「あんた馬鹿なの?」
「え」
「あんたが振ったんでしょうよ。修学旅行の日に」
「よかった!!!」
「よかったってなに。でも優依なんで事故なんかに」
「大丈夫だよ、優依は必ず救う」
「大智…彼女が亡くなっておかしくなるのはわかるけど気を確かにね」
「あぁ、うん」
「でも神様も意地悪よね。プロポーズした日に亡くなるなんて」
優依はプロポーズした日に亡くなる…
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