第30話 シルヴァの帰宅
「ふわぁ……おいしかったなぁ」
「……がぁぅ」「なぁ」「みゃ」「にゃ」
ガルガルとアオたちも美味しかったようだ。
アオたちなど、お腹をパンパンにして、うとうとしている。
「わぅ?」
「そだなー。ガルガルはごはんなしでにくだけでもおいしいな?」
「ぁぅ~」
「ごはんもおいしかったかー」
人族である僕としてはご飯とカレールーの組み合わせがたまらない。
だが、ガルガルとしてはカレーで肉を味付けしたものも食べたいらしい。
「はっ! あとかたづけをてつだわないと!」
「がう!」
あまりに美味しくて、ぼーっとしてしまっていた。
その間に、皆、後片付けを手伝い始めている。
僕とガルガルが慌てて後片付けを手伝いに行こうとしたら、
「今日は良いよ、お客さんだからね!」
とミアが言ってくれた。
「……おお、ありがと」「ぁぅぁぅ」
「明日からはお客さんじゃないから手伝ってね」
「わかった!」「ぁぅ!」
お言葉に甘えて僕とガルガルが子猫を撫でていると、ママに舐められた。
ママはのんびりとした口調で言う。
「ノエル。……ティルの拠点はどうだ?」
「ん? いいとこだな?」
「では、ここで暮らすか?」
ティルは最終判断は拠点を見てからでいいと言っていた。
だから、見た上でどう思うか、ママは聞いてくれたのだろう。
少しだけ考える。
ティルの拠点は良いところだと思う。
アオたちや聖樹たちにとっても、死の山で育つより体にいい気がする。
それにカレーライスがうまかった。それにハンバーグもあるらしい。
「うん。そだな。ここと、あとはかあさまととうさまのとこでくらす」
僕は人族なので、やっぱり人族の中でも暮らすことも体験すべきな気がする。
人族社会が気に入らなければ、ティルみたいに腐界で暮らせば良い。
「そうか」
ママは僕の頭の匂いを嗅いだ。
「ティル。聞いての通りだ。ノエルを頼む」
「ああ、任された。ガルガル、アオとクロとシロも預かるということでいいか?」
「うむ。……よろしく頼む。面倒をかけるが……」
「たいした面倒ではないさ。子供は沢山いるからね」
「……ありがとう」
それから、ママはミアやリラ、エルフの子供たちに、僕たちのことをよろしくと言って回る。
モラクス、モニファスや、ペロ、ペリオス、ペリーナにもだ。
そして最後にママは父様と母様のところに向かった。
「フィロ、カトリーヌ。実の親たるそなたらに、よろしく頼むというのはおかしな話しだが……」
「いえ、任されました。これまでありがとうございました」
「本当にありがとうございます。そして、是非これからもよろしくお願いします」
そして、ママと父様と母様は、しばらくの間、話し合っていた。
僕は寝ているアオたちを撫でながら、ガルガルに尋ねる。
「ガルガルも、ほんとうによかったのか? ママと一緒にくらしてもいいんだよ?」
ガルガルなら死の山と拠点を、ママと一緒に毎日往復することもできるだろう。
アオたちが心配ならそれでもいい。
「ぁぅ」
「そっか。ありがとな?」
ガルガルは僕と一緒にいてくれるという。
「ぁぅ~ぁぅ」
「そだな。いっしょにそだったんだものな?」
「ゎぅ」
ガルガルがいないと、僕はダメだからと言っている。
「そっかな? ぎゃくなきがするけどな?」
僕がいないとガルガルはダメな気がする。
いや、やっぱり僕はガルガルがいないとダメな気がした。
「がぅ~」
「……ん、ありがと」
僕はガルガルのことをぎゅっと抱きしめた。
父様と母様との話し合いを終えた後、ママは死の山の巣に帰ることになった。
ママは毎日、ティルの拠点と死の山を往復する予定なのだ。
「なぁぁなぁ」「みゃぁぁぁぁ」「にゃぁぁぁぁにゃぁぁ」」
だが、寝ていたアオたちは、ママが帰る気配を察して目を覚まし、激しく泣いた。
ママが帰ることは、予定通りだしアオたちも知っていたのに、凄く泣く。
「そう泣くでない。また明日訪れるゆえな」
あまりにもアオたちが泣くので、ママも帰りにくそうだ。
「アオ、クロ、シロ。あにがついているからな?」
僕は兄として、アオたちを抱っこして優しく声をかける。
「がう」
「ガルガルもな? だから、だいじょうぶだ。さみしくないな?」
ガルガルもアオたちをベロベロ舐めた。
それでもアオたちは泣きやまない。
「ティル。ジルカ。それに皆も。子猫たちを頼む」
名残惜しそうにしながらも、ママは皆に挨拶をする。
「ああ、わかっている。心配するな」
「任せるのである! シルヴァも気をつけるのだ」
「ああ、ジルカも、油断するでないぞ」
挨拶を終えると、ママは僕とガルガル、アオたちの匂いをそっと嗅ぐ。
「それではな。また明日やってくるから安心するが良い」
「うん、ノエルに任せてな?」
「がうがう」
アオたちの兄として、僕とガルガルはママを心配させるわけにはいかない。
最後にもう一度、ママはアオたちの匂いを嗅いで、優しく舐めると、巣に戻っていった。
走り始めると、ママは一度も振り返らない。あっという間に見えなくなった。
きっと振り返ると、戻ってきてしまいそうになるからだろう。
「なぁぁぁなぁぁなぁ」「みゃぁぁみぁぁぁ」「にゃぁぁにゃぁぁ」
ママが走り去ると、アオたちは一層激しく泣く。
「おちつけ、おちつけ。ほーらほらほら枝だよ~」
「ばうばう!」
僕はアオたちを下ろすと、聖樹の枝を振って遊んでやる。
ガルガルも枝を振り回す。
「…………なぁ」「……みゃ」「にゃ」
すると、一分ほどで、アオたちはあっさり泣き止んだ。
「なっなあ!」「みゃみゃっみゃ」「にゃ~にゃっ」
そして楽しそうに振り回す枝にじゃれつき始めた。
「ほーれほれほれ」「がぅがぅがぅ~」
「なっなっぁ」「みゃ~~、みゃっ」「にゃにゃにゃ!」
楽しそうで何よりだ。
「……ふう、良かった。どうなるものかと」
泣きわめくアオたちを心配そうに見つめていたミアが呟く。
「ノエル、立派になって……」
「もうお兄ちゃんね」
父様と母様は僕の兄ぶりに感動していた。
僕も自分の立派なところを見せられて嬉しい。
誇らしげにアオたちと遊んでいると、リラが近づいてきてアオたちを撫でる。
「ノエル。ちょっと良いかしら?」
「いいけど、どした?」
「神のお話をしたいから、神殿にきてほしいの」
「あ、あやしいな?」
怪しすぎる。宗教勧誘などかかわらない方が良い。
「全然あやしくないわ」
怪しい奴ほどそういうのだ。
「うちの神がノエルを見つける手伝いをしたのは聞いているでしょう?」
「うん、きいてる」
「手伝うかわりに、神殿に遊びに来てほしいって神は言っていたのよ」
「そなのか?」
僕は父様と母様の方を見た。
「そうだな。そういう話しにはなっていた」
「そうなの。ノエル。リラの神様は怪しくない良い神様よ」
父様と母様がそういうのならば、行くしかない。
恩人、いや恩神でもあるわけだし。
「そっかー。じゃあ、神殿いく」
「ついてきて」
「アオ、クロ、シロ、ちょっといってくるな? ガルガルお願いな?」
「がうがう」
「なぁ」「みゃ」「にゃ」
アオたちを順番に撫でて、僕はリラと一緒に神殿へと向かった。
僕が離れてもアオたちは泣くことはなく、元気にガルガルと遊んでいる。
頼もしい限りだ。
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