第4話 魔力測定
「そう言えば、主様」
二人が戻ってくるのを待っていると、ある時にシンシアが俺のことを呼んだ。
「なんだ?」
「下着って、こんな感じで良かった?」
「ぶふっ!?」
顔を振り向けた瞬間、高らかに漆黒のパンツが飛び込んできて、俺は咄嗟に目を逸らした。
セクハラやパワハラとか言われないよう気をつけなければと考えていたのに、まさか逆に相手側からされると思っていただけに、心臓はバックバック。
顔に集まった熱をパタパタと手で逃し、ある程度冷めたところで「別にいいと思うぞ」と何とか返す。
「エルフ様。これって着方あってますか?」
「ぶっ!?」
しかし、そんな俺に間髪入れず、デッカいブラを上半身に巻きつけているメルがやって来る。
一体どういう育ち方したらブラをそんな風に着るって発想になるんだよ!
あっ、コイツらスラム育ちだったわ。
常識がねぇのは当たり前だった。
「……それは大人用でお前ら用やつじゃない。あっちの方にあるのが丁度いいはずだ」
「分かったのです」
「っておい!いきなりその場でブラを外すなぁ!?」
「ご、ごめんなさいなのです」
俺の怒号に若干涙目になりながら、ブラを押さえた状態で子供服コーナーに引っ込むメル。
その後、シンシアに目で付いていくよう指示を出し、彼女が持っていた服を鞄に詰める。
全てを仕舞ったところで、大きく息を吐き、壁に背中を預けた。
無知過ぎるメルに、色々ぶっ飛んでるシンシア。
コイツらに色んな常識を教えなければならないのかと頭を抱えていると、紫髪ことギルネリーゼが戻ってきた。
「あの、お釣りですわ」
どこか後ろめたそうな様子で銀貨と銅貨数枚を差し出してくる。
俺はその様子に違和感を覚えて。
「あぁ、サンキュー」
受け取ってすぐ、枚数を数えたがちょろまかしている感じはない。
では、何でギルネリーゼはそんな顔をしているのだろう?
いや、マジでなんかあったけ?
俺はうーんと腕を組んでいると、ギルネリーゼがいきなり頭を下げた。
「えっと、その、ありがとう……ございますわ。あの子達に服を与えてくださって。それに、今朝あんな非礼をした私にもくださって。遅くなりましたが、申し訳ございませんでした。頰にまだ痛みはありますでしょうか?」
そう言って、不安そうにこちらを見つめるギルネリーゼ。
俺はそこでようやく今朝殴られたことを思い出す。
先程の下着周りの件で、今の今まで完全に頭から飛んでいた。
「問題ねぇよ。特に俺は治癒魔法があるからな。あのくらいのダメージなら一瞬で癒せる」
「なら、良かったですわ」
誰もが見惚れるエルフスマイルを繰り出したのにも関わらず、ギルネリーゼは顔を赤くすることはなく暗い影が差す。
(えっ、これで不正解なのかよ?)
好感度や親密度が上がる選択をしたと思ったのに、まさかこんなことになるとか年頃の女の子の扱いって難し過ぎる。
世の中のパパさん達はこんな気持ちなのかと、遠い目を浮かべた。
そのまま気まずい空気が流れ、居心地が悪くなった俺はとりあえず服を鞄に仕舞おうと、ギルネリーゼが持つ服の山に手を伸ばした。
そして、掴もうとした瞬間、下の方にある服が赤く滲んでいるのが見えた。
彼女の顔を確認すると、キッと唇を噛み締めており、歯の一部が食い込んで血が出ていた。
「おい、どうした?」
「えっ?あっ、はい。なんでしょう?」
一目見て絶対何かあると分かる状況。
けど、話しかけられた当の本人は何故かキョトンとしていて。
俺はそれに薄寒いものを覚えた。
(自傷癖か。幼い子供にありがちだとはネットで見た記憶があるが、この世界では初めて見たな)
よくよく観察してみると、ギルネリーゼの身体にある古傷は引っ掻いたようなものが多い。
てっきり、スラムのガキや魔物にやられたと時に出来たものだとばかり思っていたが、いくつかは自分自身で付けた可能性が出てきた。
(……精神病は専門外なんだが)
俺は医者で身体の傷は何度も癒してきたが、心の傷を治したことは一度もない。
「血が出てんぞ(『
なので、正解かどうかは分からないがとりあえず、彼女の唇を黒のハンカチで拭くフリをして、治癒魔法で唇と手のひらの傷を治してやった。
とりあえず、こういうのは変につっつかないのが良いと相場が決まっている。
ギルネリーゼは血で若干黒ずんだハンカチを見て、唇から血が出ていたことにようやく気が付いたらしい。
「ありがとうございますわ」
と、おずおずとした様子で頭を下げてきた。
「どういたしまして」
お礼を受け取りつつ、本当面倒なものを拾っちまったと内心後悔するのであった。
◇
一時間後。
「よしっ。仕事の説明の続きをするぞ」
服を買い終え、ついでに屋台で朝食を済ませた俺達は再び宿の部屋に戻り、授業を再開した。
「三つ目は『治癒魔法の習得』。これは出来ればって感じだな。できるようになったら助かるが、本人の才能によって習得できるか分からないし、そもそも魔法を使うのに必要な魔力が足りないと出来ないからな」
実は魔法についてはもう少し先に話そうと思っていたのだが、自傷娘がいることが判明したため、一刻も早く覚えさせた方がいいと判断したのだ。
「そういうわけで、魔力の測定をする。誰でも良いからコイツに手を乗っけろ」
俺はそう言って、十年以上鞄の奥底に眠らせていた『魔吸結晶』を取り出した。
これは触れた生き物の約半分の魔力を吸い、その量によって色が変わるという代物だ。
どんな風に色が変わるかと言うと多い順で虹、金、銀、銅、赤、青、黄、白、黒となっている。
ちなみに、俺は金。
上から二番目で、百万人に一人の割合で国に一人、二人いるかいないかの大変貴重な上級魔法使い様である。
まぁ、エルフ里に行ったら千人に一人くらいの割合になるんだが、それでもかなり少数派だ。
なので、彼女達に俺と同じ金を求めることはしない。
精々、治癒魔法が使える黄色くらいあって欲しいな程度に思っている。
そんなわけで期待せずにハンカチ越しに結晶を持っていると、シンシアがやって来た。
「私からやる」
「おら、こいや」
シンシアは俺の返事を合図にコクリと頷き、水晶に手を置いた瞬間、俺の瞳は銀色の光が焼いた。
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