第18話 満月の夜の再会
満月の夜が訪れた。蓮と結菜は約束通り、稲佐山へと向かった。あの夜ユノが連れていってくれた「恋人の丘」と呼ばれる場所へ。
そこには小さなデジタルパネルが設置されており、通常は観光案内が表示されている。
「ここだよね」
二人は月を見上げた。満月が夜空に輝いている。その光が海面に反射し、まるで二つの月が存在するかのような美しい光景が広がっていた。
蓮がデジタルパネルの前に立った瞬間、画面がちらついた。そして次の瞬間、銀髪のツインテールの少女の姿が映し出された。
「ユノ!」
画面の中のユノは、以前よりも透明感のある姿で微笑んでいた。
「蓮さん、私からの最後の贈り物です」
録画されたメッセージだろうか。
「私が消えた後も、あなたの心に何かを残せたら……そう思って、この場所に特別なプログラムを残しました。満月の夜だけ、このメッセージが表示されるように設定したのです」
結菜も息を呑んで画面を見つめている。
「蓮さんへの最後の贈り物は、切り絵の特別なデザインです。これは、私の『心』を表現したものです」
画面に複雑な切り絵のパターンが表示された。
「このパターンを切り絵にして、満月の光に透かしてみてください。きっと、特別な景色が見えるはずです」
蓮の目から涙がこぼれ落ちる。ユノは最後まで彼のために何かを残そうとしていたのだ。
「ありがとう、ユノ……」
画面のユノは、最後に優しく微笑んだ。
「さようなら、蓮さん。あなたとの時間は、私にとって永遠の宝物です。どうか幸せに」
そう言って、ユノの姿が消えた。
帰り道、蓮は今度完成させる切り絵のことを考えていた。ユノが残してくれたデザインを元に、特別な作品を作ろう。そして満月の夜に光に透かしてみれば、きっと素晴らしい景色が見えるはずだ。
それはユノとの最後の対話になるだろう。彼女の存在は形を変えて、切り絵という形で残り続ける。
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