第3話 赤い閃光
駅へ向かう商店街は、夕方の人混みで賑わっていた。
部活帰りの高校生や買い物客が行き交い、小さな屋台からはたこ焼きの匂いが漂ってくる。
翔真は視線を落としたまま歩いていた。
耳にイヤホンを差し込み、音楽を大きめに流す。
人々の声や喧騒から、少しでも自分を切り離したかった。
ふと、小さな子供が道に飛び出すのが視界の端に映った。
母親らしき女性が慌てて手を伸ばしたその瞬間――
どおん!!
空気を引き裂くような轟音が、街を震わせた。
次の瞬間、視界の端に巨大な赤い閃光が駆け抜ける。
「……ッ!!」
体が勝手に動いた。
翔真は子供を抱きかかえるようにして、その場に伏せる。
耳鳴りが酷い。
地面が揺れ、アスファルトがひび割れる感触が伝わってくる。
(なにが……起こって――)
頭が回らない。
抱きかかえた子供が泣き声をあげているのがかすかにわかる。
周囲では人々の悲鳴が交錯し、ガラスの割れる音が幾重にも響いた。
気が付けば、自分の上には巨大な影が覆いかぶさっていた。
空を見上げると、そこには赤黒く脈動する何かがあった。
(……怪物?)
理解が追いつかない。
子供を庇う腕に熱が走る。
そこから焼け焦げるような痛みが広がり、全身が痺れた。
ズゥン、と胸の奥に重い衝撃が来た。
視界が真っ赤に染まり、全ての音が遠のいていく。
(あぁ……俺、ここで……)
ぼんやりと、昼間に見た雪乃の顔が思い浮かんだ。
(もっと……話したかった……)
そう思った瞬間、何かが弾けるように意識を失った。
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