第30話 オウムマン

ファフニールが敗れた。学生の信者からそう聞かされたオウムマンはあり得ないと頭を抱えた。

その場に居合わせたケンドーンも顔に驚愕の色を浮かべる。

オウムマン「新型の時間停止装置を作ったんだぞ!?どうすりゃいいんだホワイティ博士!」

オウムマンはホワイティ博士の残していた設計図をもとに、限りある予算の中やりくりして、やっとの思いでファンタズ魔達を完成させていた。

オウムマン「俺は、頑張ってきたぞ!ワカマツグループを窮地に陥れたり。シッダーをやったり。ヘビを使った作戦だって!」

オウムマンは人間だった頃の大学受験に失敗した陰キャな自分がフラッシュバックした。何をやってもダメだった自分。オウムマンは拝殿に走って向かい、顔を隠した3体の男性神、モルゲッソー達にかしずいて吠えた。

どうして?なんでいつも?俺は失敗する?

オウムマン「なぜ?!モルゲッソーよ!俺を導いて下さい!」

高卒の彼の頭ではいくら高性能な支援AIを搭載していてもナンマイダー達を倒すに至るアイデアが思いつかなかった。負け組人生、Fラン大学生だった自分を救ってくれ、教団の幹部にも採用してくれたイケダ尊師はもう居ない。

オウムマン「クウカイレッド!」

同じような境遇でありながら、クウカイレッド、サエキリョータはオウムマンが欲しかったものを全部手にしている。

身体能力も、容姿も、家族も、仲間も、彼女も、異能も、奇跡も。

ケンドーンも拝殿に遅れてやってきて、オウムマンの肩を叩いた。

ケンドーン「潮時だ。もう、俺たちソッカーにナンマイダーを倒すのは無理だ。諦めろ、オウムマン。」

オウムマンはケンドーンの手を払い除けた。

オウムマン「奴さえ!クウカイレッドさえ!居なくなれば何とかなるんだ!何度でもソッカーは復活する!」

オウムマンは最後のファンタズ魔、ヴァスキを完成させると教団を去った。


雪の降る大晦日、サエキの家に電話がなった。

オウムマンから果し状の電話だ。

オウムマン『お前を倒して終わりにしてやる。もう、小細工も他人に頼るのもやめだ。決着をつけようクウカイレッド。』

サエキ「いいだろう。場所は?」『これで終わりにしてやるぞソッカー!』

オウムマン「お前が決めろ。」

サエキ「それじゃぁ……。」

場所はサエキがいつも通っていた稲荷神社。二人が対峙した日は雪は積もるくらい降っていたが、オウムマンの時間停止によってピタリと降るのを止めた。

それと同時にサエキもクウカイレッドに変身した。

オウムマンは空間に手をいれると、そこから抜き身の渦巻きの唐草模様に似た赤い紋様の刀を取り出した。

サエキ『ジョーモンブレイド?!』「臨兵闘者皆陣烈在前、天の沼矛。」

サエキは人の大きさになって現れた八柄の剣を手にした。

ドン!

風神が不意に飛び出して、オウムマンに殴りかかった。

風神「オラァ!」

ガキィン!

オウムマンはジョーモンブレイドで軽く弾き返した。

サエキ「!?」

風神「オラオラオラオラオラオラ!オラァ!」

その場で風神が無数の目にも留まらぬ拳を叩き込んだのにオウムマンは全て刀で弾いた。

オウムマンは最後の風神の大振りの拳を避けてサエキの間合いに飛び込んだ。

風神「!大将!」

シュッ!

ジョーモンブレイドでの刺突。

サエキは咄嗟に身をよじって八柄の剣で受けた。

オウムマン「俺は新型ハカイソー、ファンタズ魔技術で自身を改造した。お前の技など効かん!」

グググ。

サエキ「くっ!」『パワーもセッショー以上だ!』

ズヒュン!

迦楼羅天がサエキの頭上に舞い上がり、オウムマンめがけて口から火を吐いた。サエキもそれに合わせて後ろに飛んだ。

サエキ「やったか?!」

そこには服を焼かれた。全身銀色に光る鋼鉄のオウムマンが平然と立っていた。

サエキ「メタルなんとか?!」『つか、首から下は小さな羽根で覆われてたのか!』

オウムマン「よく覚えてるな、メタルスモッグ、蒸着で装甲は数倍に強度を増す!」

その時、後ろ手に、オウムマンのジョーモンブレイドを持つ手がムチに拘束される。

ムチをたどるとそこにはイナリホワイトに変身したフシミが立っていた。

オウムマン「!何?とれん?!」

フシミ「ウガーウィップ!神の力を甘く見たわね。ここがお前の墓場よオウムマン!」

オウムマン「な、なにぃ!墓場だと?!」

フシミ「サエキ君にコンタクトがあると思って。術でここを指定させた。神域のここでは神の力は段違いなのよ!」

サエキ『陰陽道、神道は奥が深い。』「というわけだ、オウムマン!おとなしく自首しろ!」

オウムマンは高らかに笑った。

オウムマン「神だって?!俺にも神はついてる!負けはしない!モルゲッソーよ!照覧あれ!」

オウムマンは黒い闘気を発し、2人を吹き飛ばした。

フシミ「きゃぁ!」

サエキ「なんだと!」『サイコキネシス!?』

オウムマン「しね!クウカイレッド!」

オウムマンは倒れたサエキめがけて飛んだ。

その一瞬にヌキナが二人の間に入って来た。その手にはパイルバンカーが握られている。

ヌキナ(迦楼羅天)「クリカラパイル!」

ドスン!

オウムマンは避けきれずに高速で打ち出された杭に体を貫かれた。

オウムマン「うおぉ!?」

ヌキナ(迦楼羅天)「当たった!」

サエキ「俺が一人で来たと思ったのか!?」

よろけるオウムマンにワカマツがどこからともなく現れてオウムマンの傷口めがけて、目にも留まらぬ速さで殴りかかった。

ワカマツ(風神)「雷光拳!オラァ!」

バチン!

オウムマン「ぐわぁぁ!」

ボン!

オウムマンの体内で基盤がショートする音が聞こえる、

サエキ「やった!」『外がダメなら中はどうだ!』

オウムマンは倒れた。しかし、その体はみるみる大きくなった。

オウムマン(巨大化)「くそー!ナンマイダー!卑怯だぞ!」

サエキ「お前らには言われたくないね!」

ヌキナがそーよ!そーよ!と囃(はや)し立てる。

ワカマツ「アミダーZ!起動!」

フシミ「出番よ!ダキニーten!」

サエキ達の頭上の厚い雲が裂けて、陽の光に照らされた2体の巨大ロボが降臨する。

オウムマンは手から黒い闘気を放ってアミダーZに食らわす。瞬間移動したサエキ達をその衝撃が襲う。

サエキ「うわ!」

よろけたアミダーZが神社の鳥居を倒してしまう。

ヌキナ「あぁ!鳥居が!?」

サエキ「くっそ!千手観音掌!」

アミダーZの高速で繰り出される張り手がオウムマンを襲う。しかし、張り手は空を切るばかりで、オウムマンはすべて避けてみせた。

オウムマン(巨大化)「フハハハ、当たらなければどうということもない!」

バチィン!

オウムマン(巨大化)「!グワァ?!」

ダキニーten、その両方に浮かぶキツネの口から放たれた太いビームがオウムマンを襲う。オウムマンが倒れ稲荷神社が破壊された。

フシミ「モガミビーム!」

ボサッツーAI『もう、撃っといたぜ!』

フシミ「やるわね!羂索(けんじゃく)!」

ダキニーtenの左腕に巻かれていた数珠がオウムの体を捕縛した。

オウムマン「ぐ!そんな!取れん!?」

フシミは両手で不動明王印を組み一心に真言を唱えていた。

フシミ「ノウマク・サンマンダ・バザラダン・センダ・マカロシャダ・ソワタヤ・ウンタラタ・カンマン!(繰り返し)」

ワカマツ「今だ!」

サエキ「臨兵闘者皆陣烈在前!八柄の剣!」

アミダーZの前に巨人サイズの八柄の剣が現れてそれを掴んだ。

ヌキナ「もしかして、アレいっとく?!」

ワカマツ「アレか!」

サエキ「じゃぁ、行くぞ!」

ナンマイダー「「「必殺!!!降三世明王斬り!!!」」」

一層、眩く光る刀身がオウムマンを両断する。

オウムマン「ぎゃぁ!そ、ソッカーに栄光あれ!」

チュドーン!

怪人が爆散すると時間停止中に起きた出来事が元通りになっていく。倒壊した稲荷神社も鳥居も元通りになった。

4人が大地に降り立ち、同時にアミダーZとダキニーtenもかき消えた。ナンマイダーの変身も解けた。

サエキ『よかった。』

ジーン

サエキの体を何かが通り抜けるような感じがした。

ありがとう。

サエキはその幻聴、声に聞き覚えがあった。

サエキ『あの時の姫の声だ。』

その時、ヌキナのお腹が鳴った。慣れない身体で式神を使った反動だろうか?

ヌキナ「私お腹すいちゃった。」

フシミ「私も。」

ワカマツ「しゃーない、駅前のファミレスでいいか?サエキ。」

サエキ「おう!いこいこ!」

サエキたち、ナンマイダーの日当は腹の中に消えた。

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