第2話 見知らぬ土地で追いかけ回されました。

はぁ。はぁ。はぁ。はぁ。

息が荒い。どうにか呼吸を落ち着けようと必死に呼吸を繰り返す。

『ダイジョウブカ、アイボウ』

剣が語りかけてくる。だが今の俺に返事をする余裕はない。


動物舎から出た俺はどこか隠れられる場所を探したが見渡す限り広々とした場所で身を隠せる場所はなかった。それどころか明らかに俺の住んでいた東京ではない風景に後ずさりをしてしまった。だが、後ろからさっきの男性の怒鳴り声が聞こえてくる。俺は慌てて道っぽい道を走り出した。後ろを振り向くと農具を構え追ってくる男性。そして、その男性の声を聞きつけ、あちこちから人が集まってきた。

「なんでだよーっ!!」

俺は叫びながら無我夢中で走った。しばらく追いかけられていると、だんだん家らしき物が増えてきた。俺は家と家の狭い隙間を潜り抜け、何とか追っ手を撒こうと必死になった。ある程度振り切った時、小さい小屋を見つける。

(あそこなら隠れられる)

そう考えた俺は急いで小屋の中に入り、箱をどかして隙間を作ると急いで入り箱を積み上げる。そして体育座りが出来る程度の隙間に隠れた俺は、近付いてくる怒声に怯えながら息を整える。

(なんでこんな目にあってるんだよ)

この理不尽な状況に涙が出てくる。

『リユウヲシリタイカ』

剣が話しかけてくる。俺は慌てて剣に黙るように小声で言う。

『シンパイハイラネェヨ。オレノコエハ、キホンテキニ、オマエニシカキコエナイ。ダカラ、オマエサエキヲツケレバ、モンダイナイワケダ』

剣の説明に安心する。それはそれとして、気になっている事を聞く。

「お前はこの状況を知っている訳だ。なら早く教えろよ」

『マァ、アワテルナッテ。オレガセツメイスルヨリ、オマエガオモイダスホウガラクダヨ』

「そんな方法があるのかよ……」

『アア。コノセカイニテンセイスルカテイデ、カルイキオクショウガイニナッテルダケダカラナ。オレノ、ケンノツカガシラデオデコヲタタケバ、イヤデモオモイダスサ』

つかがしらってどこだよ?そう思いながら見ていると、

『モチテノイチバンウシロ!チョットマルマッテルブブン!!』

剣に教わって"つかがしら"を見つけた俺は、額に当てられるように剣を構え直す。そして深呼吸をして、つかがしらに向けて額をぶつけるように頭突きをした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る