第35話 永遠の子供時代

「永遠の幼年団...」


真一が黒ローブの集団を見据える。


その数、約30人。全員が不気味な子供の仮面を付けていた。


「なぜ大人の姿なの?」


セラフィーナが疑問を投げかける。純白の戦闘服が、月光に輝いている。


「我々は選ばれし者」


リーダーらしき人物が答える。


「聖杯の力を正しく使うため、あえて大人の姿を保った」


「矛盾してない?」


リリスが皮肉を込めて言う。黒のバトルスーツが、曲線美を強調している。


「子供が理想なら、自分たちも子供になれば?」


「愚かな」


リーダーが嘲笑う。


「子供には知恵がない。だから導く大人が必要なのだ」


* * *


「要するに」


エリザベートが冷静に分析する。黒のスーツが、鋭さを演出している。


「自分たちは支配者になりたいのね」


「違う!我々は保護者だ!」


「同じことよ」


アルケミアも呆れ顔だ。紫の白衣から、挑発的に胸元が覗く。


「典型的な独裁者の思考ね」


「黙れ!」


幼年団が武器を構えた。


「力ずくでも聖杯を奪う!」


しかし、その時。


「待ちなさい」


優雅な声と共に、ファントムが現れた。


* * *


黒いボディスーツに身を包み、屋根の上に立っている。


月光を浴びて、妖艶なシルエットが際立つ。


「ファントム!」


「あら、また会ったわね」


ファントムが真一たちに微笑む。


「今回は味方をさせてもらうわ」


「なぜ?」


「この人たち、趣味が悪いもの」


軽やかに飛び降りると、幼年団の前に立った。


「子供の純粋さを利用するなんて」


「怪盗として許せないわ」


「邪魔をするな!」


幼年団が襲いかかる。


* * *


戦闘が始まった。


ファントムの動きは、やはり神業だった。


煙幕を使い、姿を消し、敵を翻弄する。


「こっちよ〜」


「いや、こっち!」


分身の術まで使いこなす。


「すごい...」


美月が見惚れている。白いローブが、興奮で震えていた。


一方、真一たちも応戦する。


セラフィーナの光魔法が炸裂し、

アルケミアの爆弾が爆発し、

エリザベートとリリスの連携攻撃が決まる。


しかし、敵も手強かった。


* * *


「聖なる子供の力よ!」


幼年団が呪文を唱えると、奇妙なことが起きた。


「うわっ!」


真一の体が、少しずつ縮み始める。


「これは...」


「部分的な子供化!?」


アルケミアが驚く。


「聖杯の力を一部だけ引き出してる!」


このままでは、全員子供にされてしまう。


「くっ...」


その時、レオンたち子供軍団が現れた。


「お兄ちゃんたちを助ける!」


「子供なめんな!」


* * *


子供たちが、幼年団に石や棒を投げつける。


「やめろ!」


「我々は君たちのためを思って」


「うるさい!」


レオンが叫ぶ。


「ぼくたちは、自分で選びたいんだ!」


「子供のままか、大人になるか」


「それを勝手に決めるな!」


子供たちの純粋な怒りに、幼年団がひるむ。


「で、でも...」


「子供は保護されるべき...」


「違う!」


美月も声を上げる。


「子供も一人の人間!」


「尊重されるべき存在なの!」


* * *


その言葉に、ファントムが頷いた。


「その通りね」


「今なら分かるわ」


仮面を完全に外し、素顔を晒す。


美しい紫の瞳に、決意が宿っている。


「私が盗むべきものは」


「彼らの歪んだ思想」


ファントムが懐から何かを取り出した。


「これは...」


「聖杯の力を無効化する宝石」


「千年前の遺物よ」


宝石が輝くと、子供化の呪いが解けた。


「やった!」


* * *


形勢逆転。


幼年団は、もはや戦意を失っていた。


「我々の理想が...」


「理想じゃない」


真一が断言する。


「それは、ただの支配欲だ」


「子供を愛するなら」


「彼らの成長を見守るべきだ」


その言葉に、幼年団のリーダーが仮面を外した。


現れたのは、疲れ果てた中年男性だった。


「私は...教師だった」


「生徒たちが大人になって」


「汚れていくのが辛くて...」


* * *


「気持ちは分かる」


セラフィーナが優しく言う。


「でも、それも人生なの」


「清濁併せ呑んで、人は成長する」


「...そうか」


男性が膝をつく。


「私は...間違っていたのか」


他の団員たちも、次々と仮面を外した。


皆、子供の成長に関わる職業の人々だった。


教師、保育士、児童カウンセラー...


「みんな、子供を愛するあまり」


エリザベートが静かに言う。


「道を誤ったのね」


* * *


結局、幼年団は解散した。


彼らは、それぞれの場所に戻っていった。


「もう一度、正しく子供と向き合う」


そう誓って。


一方、ファントムは。


「面白かったわ」


妖艶に微笑む。


「でも、これでお別れ」


「待って」


真一が呼び止める。


「パラダイス・シティに住まない?」


「あら?」


「君みたいな人も、街には必要だ」


ファントムは少し考えて。


「...また来るわ」


煙と共に消えた。


「絶対、また会えるよね」


美月が呟く。


* * *


平和が戻り、聖杯までの日数は40日を切った。


しかし、真一には不安があった。


(まだ何か起きる気がする)


その予感は、数日後に的中した。


「報告!」


子供兵士が駆け込んでくる。


「東の国から、大軍が!」


「今度は何?」


「『大人至上主義帝国』だそうです!」


「...はぁ!?」


また新たな勢力が現れた。


今度は、大人だけの世界を作ろうとする者たち。


やべー女たちの戦いは、まだまだ続く。


次回予告:

「大人vs子供の全面戦争!?」

「両極端な勢力の激突!」

「真一たちは平和を守れるか!」

第36話「大人と子供の狭間で」、お楽しみに!

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