第34話 怪盗と聖杯

深夜、パラダイス・シティは厳戒態勢に入った。


「どうやって盗まれたの?」


真一が聖杯の保管庫を調べる。


「分からない...」


ルシファーが困惑している。黒いドレスから、不安そうな白い肌が覗く。


「千年分の結界と罠を仕掛けたのに」


「でも、全て無傷で通り抜けてる」


エリザベートが鋭く分析する。黒のスーツ姿で、探偵のようだ。


「これは...プロの仕業ね」


そこへ、一枚のカードが舞い落ちてきた。


『聖杯、確かに頂戴しました ―怪盗ファントム』


「怪盗ファントム!?」


セラフィーナが驚く。純白のパジャマが、興奮で揺れている。


「まさか、あの伝説の...」


* * *


「知ってるの?」


「ええ、各国のお宝を盗む謎の怪盗よ」


アルケミアが説明する。紫のネグリジェから、豊かな胸元が覗く。


「でも、盗んだものは必ず返すの」


「返す?」


「そう。『真の持ち主』に返すって」


リリスも頷く。黒のベビードールが、妖艶に揺れる。


「ロマンチックな怪盗として有名ね」


「でも、今回ばかりは困る」


真一が深刻な表情で言う。


「聖杯を悪用されたら...」


「すぐに探し出さないと」


* * *


翌朝、街中で聖杯捜索が始まった。


「みんな、聞いて!」


美月が子供たちを集める。白いワンピースが、朝日に輝いている。


「聖杯を探すの、手伝って?」


「はーい!」


子供たちが元気に返事をする。


「見つけたらお菓子あげる!」


「やったー!」


子供捜索隊が街中に散らばっていく。


レオンも張り切っていた。


「ぼくが一番に見つける!」


小さな体で、必死に探し回る。


* * *


一方、大人組は怪盗の手がかりを追っていた。


「ファントムの犯行パターンは?」


「必ず予告状を送る」


エリザベートが過去の資料を調べる。


「そして、華麗に盗んで華麗に去る」


「でも、今回は予告状なし」


「つまり?」


「偽物か、あるいは...」


その時、アルケミアが声を上げた。


「見つけた!」


紫の白衣をはためかせて、駆け寄ってくる。胸が大きく揺れている。


「聖杯の魔力反応!」


* * *


「どこ!?」


「北の森の奥!」


全員がすぐに向かった。


森の奥深く、古い小屋があった。


「ここね」


慎重に近づくと、中から歌声が聞こえてきた。


美しい女性の声だ。


「♪盗んだ宝石は〜、貴方の瞳〜♪」


「怪盗ファントム!」


真一が扉を開けると。


そこには、見惚れるほど美しい女性がいた。


黒いタイトなボディスーツに、仮面を付けている。豊満な胸と、しなやかな肢体が妖艶だ。


「あら、お客様?」


* * *


「聖杯を返せ!」


セラフィーナが前に出る。


「人々が困ってるのよ」


「あら、私は助けてるつもりよ?」


ファントムが優雅に立ち上がる。長い黒髪が、艶やかに揺れた。


「この聖杯、危険すぎるもの」


「だから?」


「封印して、海の底に沈めるわ」


「待て!」


真一が叫ぶ。


「それじゃ、みんな子供のままだ」


「その方が平和でしょう?」


ファントムが妖艶に微笑む。


「大人は争い、子供は遊ぶ」


「素敵な世界じゃない?」


* * *


「それは違う!」


美月が必死に訴える。


「子供も大人も、どちらも大切なの」


「成長することが、人間の素晴らしさ」


「綺麗事ね」


ファントムが鼻で笑う。


「じゃあ、実力で奪い返す?」


瞬間、ファントムの姿が消えた。


「速い!」


次の瞬間、リリスの背後に現れる。


「あら、素敵な下着」


「きゃっ!」


リリスの黒いベビードールの紐が切られ、危うく脱げそうになる。


「この...!」


* * *


戦闘が始まった。


しかし、ファントムの動きは神業だった。


エリザベートの攻撃をかわし、

セラフィーナの魔法を避け、

アルケミアの薬品も効かない。


「くっ...」


「あら、もう終わり?」


ファントムが余裕の笑みを浮かべた時。


「待った!」


子供の声が響いた。


レオンが、他の子供たちと一緒に現れた。


「お姉さん、それ返して!」


* * *


「子供...」


ファントムの動きが止まった。


「みんな、元に戻りたいんだ!」


「大人になりたいんだ!」


子供たちの必死な訴えに、ファントムの表情が変わった。


「...そう」


仮面の奥の瞳が、優しく細められる。


「貴方たちは...成長したいのね」


「うん!」


レオンが力強く頷く。


「ぼくは、強い王様になりたい!」


「みんなを守れる大人になりたい!」


他の子供たちも口々に夢を語る。


ファントムは、静かに聖杯を差し出した。


* * *


「...負けたわ」


「ファントム...」


「子供たちの純粋な願いには」


仮面を外すと、美しい素顔が現れた。紫の瞳が、涙で潤んでいる。


「私も昔、早く大人になりたかった」


「でも、大人になって分かったの」


「子供の頃の純粋さを失ってしまったって」


真一が優しく言う。


「でも、ファントムはまだ純粋だよ」


「だって、人を傷つけずに盗むんだろ?」


「...ありがとう」


ファントムが微笑んだ。


「聖杯は返すわ」


「でも、気をつけて」


「まだ45日ある。狙う者は他にもいるはず」


* * *


こうして、聖杯は無事に取り戻された。


しかし、ファントムの警告は的中した。


その夜、新たな敵が現れた。


「聖杯を渡せ」


黒いローブの集団。

しかし、今度は子供ではない。


「お前たちは?」


「我々は『永遠の幼年団』」


「世界を永遠に子供のままにする」


「それが我々の理想」


「...またやべー奴らか」


真一がため息をつく。


今度の敵は、本気で世界を子供だけにしようとしているらしい。


戦いは、まだ終わらない。


次回予告:

「永遠の幼年団の恐るべき計画!」

「ファントムも仲間に!?」

「大人vs子供推進派の全面対決!」

第35話「永遠の子供時代」へ続く!

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