第10話 不動産戦争、開戦

「聞いて!大変なことが起きたわ!」


エリザベートが血相を変えて事務所に飛び込んできた。いつもの完璧なスーツ姿が乱れ、ブラウスのボタンが一つ外れて黒いブラジャーが見えている。


「どうしたの?」


セラフィーナが心配そうに聞いた。今日は白いサマードレスで、薄い生地から清楚な下着のラインがうっすらと透けている。


「大手不動産会社が、この地区に進出してきたのよ!」


エリザベートはタブレットを見せた。画面には立派なビルの写真が映っている。


『ホーリーハウス不動産 ~真心と信頼の住まい探し~』


「なんて真っ当な会社名...」


真一が呟いた。


* * *


翌日、ホーリーハウスの代表が挨拶に来た。


「初めまして。ホーリーハウス不動産の神崎と申します」


清潔感のあるスーツに身を包んだ、爽やかな青年だった。


「この度、こちらの地区で営業させていただくことになりました。よろしくお願いします」


丁寧にお辞儀をする。


「あ、はい...よろしく」


真一も釣られてお辞儀した。まともな人を見るのが久しぶりで戸惑う。


「デッドハウス・スペシャルさんは、ユニークな物件を扱っていると聞きました」


神崎が微笑んだ。


「ユニーク...まあ、そうですね」


呪われた館、人体実験住宅、洗脳都市、別れさせ物件。

確かにユニークだ。ユニークすぎる。


「私どもは正統派の物件で勝負させていただきます。切磋琢磨していきましょう」


神崎は爽やかに去っていった。


* * *


「なにあの真面目くん!」


アルケミアが頬を膨らませた。白衣の裾をぱたぱたと振り回し、紫のミニスカートがひらひらと舞う。


「気に入らないわね」


リリスも同意した。黒いチューブトップから溢れそうな胸を腕で持ち上げる仕草で、谷間が強調される。


「でも、向こうは大手よ。資金力も組織力も違う」


エリザベートが真剣な表情で言った。考え込む仕草で、ペンを唇に当てる。その姿が妙に色っぽい。


「どうする?」


「決まってるじゃない」


セラフィーナが立ち上がった。純白のドレスが翻り、白い太ももがチラリと見える。


「私たちの特殊能力を総動員して、最高の物件を作るのよ」


* * *


4人の力を合わせた「究極物件」の開発が始まった。


「まず、私が土地を浄化するわ」


セラフィーナが聖なる力を解放する。光に包まれた土地が、見る見るうちに美しく整備されていく。


「次は私!」


アルケミアが特殊な建材を投入した。


「自己修復機能付き!傷ついても勝手に直る!」


白衣をまくり上げて作業する姿から、紫の下着が丸見えだったが、本人は気にしていない。


「じゃあ、私は...」


リリスが妖艶に微笑んだ。


「住むだけで魅力的になる『魅惑の館』にするわ♪」


淫魔の力を建物に込めていく。作業中、汗でチューブトップが体に張り付き、豊満な胸の形がくっきりと浮かび上がった。


「最後は私の不動産マジック!」


エリザベートが契約書を作成する。


「どんな人でも契約したくなる、魔法の約款よ」


* * *


完成した物件の内覧会には、多くの人が集まった。


「すごい...」

「こんな家見たことない」

「住みたい!」


大盛況だった。


しかし...


「ちょっと待ってください」


神崎が現れた。


「この物件、建築基準法に違反してませんか?」


「え?」


「自己修復建材は認可されてませんし、この契約書も...」


神崎が冷静に指摘していく。


「さらに」


神崎の後ろから、役所の職員が現れた。


「違法建築の疑いがあります。調査させていただきます」


「そんな!」


エリザベートが青ざめた。


* * *


結局、物件は営業停止処分を受けた。


「くそ...正攻法で来るなんて」


エリザベートが悔しそうに呟いた。


「ずるい!」


アルケミアが地団駄を踏む。その振動でスカートがめくれ上がり、白いパンツが丸見えになった。


「でも、向こうは正しいことをしただけよね」


真一が指摘すると、4人が一斉に睨んできた。


「誰の味方なの!」


「いや、事実を...」


* * *


「このままじゃ負ける」


セラフィーナが深刻な顔で言った。


「新しい作戦が必要ね」


リリスが妖しく微笑んだ。


「そうだ!向こうの会社に潜入して...」


「やめなさい」


真一が慌てて止めた。


「じゃあどうするの?」


4人が真一を見つめる。


真一は考えた。そして...


「普通に良い物件を作ればいいんじゃない?」


「「「「普通?」」」」


4人が同時に首を傾げた。


「普通って何?」


この人たちに普通は無理か...


* * *


その時、意外な人物が事務所を訪れた。


「あの...」


ホーリーハウスに務める若い女性社員だった。


「どうしました?」


「実は...神崎社長の命令で、あなたたちの弱みを探りに来ました」


正直すぎる。


「でも...」


女性社員が顔を赤らめた。


「リリスさんの『魅惑の館』を見て...素敵だなって」


「あら♪」


リリスが嬉しそうに女性社員に近づいた。胸を寄せて甘い声で囁く。


「もっと詳しく聞かせて?」


女性社員の顔がさらに赤くなる。


これは...新たな展開の予感。


「ところで」


エリザベートが商売人の顔になった。


「神崎社長の弱みとか、知らない?」


不動産戦争は、まだ始まったばかりだった。

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