外典

砂の書〜爪牙の章〜(第一文明)

『「砂の書・泥の章」は彼らを『狩人』と記した。

 この章は、彼らの過ちを記す。』


 はじめの子らは、獣のかたちと人の知恵を持っていた。

 彼らは砂漠を恐れず、その爪は岩を裂き、その牙は砂嵐を喰らった。

 彼らは自らの『力』を星の祝福と信じ、翠点から翠点へと『狩り』を広げ、星の全ての獣をその足下に跪かせた。

 彼らは『狩人』であることに酔いしれ、自らが『獣』であることを忘れた。


 『獣』は群れのために狩り、『獣』は生きるために狩る。


 だが彼らは、自らの力を示すためだけに狩った。

 彼らは星の理を歪め、力を誇るあまり、『陽』にさえ牙を剥こうとした。


 星は嘆き、最初の『浄化の泥』を溢れさせた。

 泥は、彼らの誇る爪も牙も届かぬ深きより来たり、その傲慢な力を、強すぎる本能ごと、第一の地層に塗り込めた。

 ゆえに知れ。

 力に溺れる者は、最も脆く、泥に沈む。

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