砂の書〜枝の章〜(第二文明)

 ​『「泥の章」は彼らを『大樹』と記した。

 この章は、彼らの虚栄を記す。』


 一度目の泥が固まった大地に、二番目の子らが生まれた。

 彼らは『狩人』の滅びを見て、力を恐れ、動きを止めた。

 彼らは翠点の水辺にて、星の恵みたる『樹』と一体となり、永遠の安息を得ようとした。

 彼らは、天を目指す大樹となり、その枝葉に壮麗な都を築いた。

 彼らは空を焦がれ、地を忘れ、自らが『樹』であることに安住した。


 『樹』は地に根を張り、水を吸う。


 だが彼らは、自らの根が、第一の泥の上に築かれていることを忘れた。

 彼らは天に近づくことを『進化』と呼び、足元の過去を見下した。


 星は怒り、二度目の『忘却の泥』を湧き上がらせた。

 泥は、彼らの信じた永遠の『根』を腐らせ、天の都を叩き折り、その虚栄の枝を、二層目の泥に叩きつけた。

 ゆえに知れ。

 過去を忘れる者は、足元をすくわれ、泥に倒れる。

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