砂の書〜陽と海の章 〜(創世)

 『かの書は、まず世界の始まりをこう記す。』


 初めに、星は海であった。水は豊かに満ち、生命は揺籃にあった。

 だが、空なる『陽』は孤独を憎み、海を自らのものにしようと焦がれた。 

 『陽』は七度その手を伸ばし、海を奪い去った。

 奪われた水は空で灼け、乾いた灰となって大地に降り注いだ。

 大地は渇きに身をよじり、苦しみの裂け目から、かろうじて残った海が『涙』として滲み出た。

 それが、我らの命の『雫』である。

 ゆえに知れ。

 我らが大地すなは、かつて奪われた海の『亡骸』であり、我らが翠点は、星が流す『涙』である。

 『陽』はいまだ空にあり、我らが涙をも奪わんと、日々、大地を熱し続けている。

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