第5話 幸せってなんだろう
山崎親子は膨大な資料を前に頭を抱えていた
長老が話した「布酢怒」についての記載がある本はどこにもなかった。
やはりただの迷信だったのか。集中力を切らした僕は飽きて児童向けの妖怪絵本を読み始めた。妖怪の類って長老も言ってたしと自分に言い訳しながら
『お父さんお母さんせんせいともだちにおはよう、ごめんなさい、ありがとうをいえないわるいこはつれさられちゃうんだって』
『ふすーどんどんどん!おおきな音を立ててそっくりになっちゃう。』
『でもしあわせなこはもどってこれるんだって。みんなもおはようごめんなさいありがとうをいってしあわせにすごそうね』
…ハハッ。幸せかどうかなんて主観でしかないじゃないか。
それでもこれしか頼るものがない。お父さんにこれを見せると目の色がかわり『災害現場での犯罪の傾向と対策』という別な本を差し出された
『自然災害が起きた現場ではモラルハザードがおき平時より犯罪率が上昇する』
『また心的外傷の影響からか同一人物が複数人いるなど当事者が不明瞭な証言を繰り返し摘発も困難となりやすい』
『平時素行が善良なものが凶悪犯罪に手を染めるケースもあり、犯行動機には己の不幸を他人に責任転嫁する発言が目立った』
「もしかしてこれ…布酢怒!?」
「可能性はあるな。でもこんな話だれが信じてくれるか…」
僕たちはひとまずその2つの資料をコピーしホテルに戻った。
「幸せか…」
作業所に通いお父さんの手伝いを時々する毎日、きっと幸せだと思う。明日は『YORU』ちゃんのイベントにも参加できる。
「布酢怒、何が不満なのか教えてくれ」
知らない天井に話しかけても返答はなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます