MoA:Rank9「vsホワイト」

ごきげんよう、マイグラント。


次の相手は識別名“ホワイト”


……あなたは、パラドックス、ドッペルゲンガーというものをご存知ですか?

あなたにわかりやすく言うのなら……完全同位体というものをご存知でしょうか?

今から戦う彼も、同じことです。

あなたという、揺らぐ存在……

それの、鏡写しと言える人物です。


彼は左腕に強化パイルバンカー、右腕に二連アンダーバレルマシンガン、右肩に六段三連装ミサイル、左肩に二連グレネードキャノンを装備した……パワードスーツ着用型の兵士です。

……説明するまでも無いでしょうか。ええ、全てはあなたの闘い方と同じ。

違うとすれば……オペレーターくらいのものでしょうか。

あちらにつくオペレーターがどういった人物なのかは、あなたのご想像におまかせします。


以上となります。

シルヴィアは、あなたの働きに期待しています。

























 エンドレスロール 世界樹・最上層ギンヌンガガプ

 宇宙に突き出た世界樹の頂上、機械的な円形のフィールドで目覚めると、まさしく自分の瓜二つの兵士が立っていた。

『敵性反応です、マイグラント……ッ……!?』

 あちらのオペレーターの声が聞こえ、そして間もなく酷く動揺する。

『マイグラントが、二人……!?』

 あちらは強化パイルバンカーを起動して蒸気を排出し、こちらも応えて同じ動きを見せる。

『こほん。失礼しました、マイグラント……ともかく、彼を倒しましょう』

 あちらのオペレーターの声が途絶えると同時に、こちらの脳内にシルヴィアの声が届く。

『マイグラント、今回は私がサポートします。いくらあなたと言えど、自分自身との戦いは紙一重でしょうから』

 お互いに右斜め前方に飛び出し、マシンガンで的確に狙いながら中距離を保つ。あちらが先んじて右肩の六段三連装ミサイルを発射し、こちらが前に出ると即座に潰すように左肩の二連グレネードキャノンを発射し、直上に飛び上がって避けながらこちらも左肩の二連グレネードキャノンを撃ち下ろし、避けられはするものの爆風で衝撃を蓄積し、あちらはフルチャージした強化パイルバンカーの撃針を空中のこちらへ放つ。

『回避を』

 言われるまでもなく左に動いて躱し、ホワイトが一歩前に出て胴体部を連結し、生命エネルギーを転化した衝撃波を解放する。それに合わせてこちらも衝撃波を解放して相殺し、ホワイトが先に動いて左蹴りを当てて押し飛ばし、硬直に二連グレネードキャノンを合わせるが、こちらも硬直が解けてすぐ左へブーストして回避し、そのままノンチャージの強化パイルバンカーを当てて衝撃を蓄積しながら、意趣返しとばかりに押し飛ばす。マシンガンを過たずに当てながら後退して着地し、すぐに三連装ミサイルを斉射して、あちらも同じように後退して回避しつつミサイルを撃ち返す。

『お互いに極めて堅実かつ大胆な立ち回りですね。ホワイトもあなたとほぼ同じ戦い方であるがゆえに、決着には時間がかかります。時には、固定概念を崩して決着を狙うことも重要です』

 シルヴィアの言葉を聞きながら、全速力で前方へ詰める。

『マイグラント、彼はあなたと同じような戦い方ですが……距離感の把握があなたよりも上手いようです。パイルバンカーの使用には細心の注意を』

 あちらのオペレーターがそう言いつつも、ホワイトは強化パイルバンカーをチャージしていき、突っ込むこちらに向けてマシンガンを連射する。こちらは勢いのまま弾丸とレーザーを弾き、チャージしたマシンガンをレーザーブレードにして斬りかかる。その瞬間にホワイトは強化パイルバンカーを振り被り、こちらもマシンガンを手放して強化パイルバンカーを合わせる。両者の猛烈な威力で射出された撃針同士が激突して大爆発を起こして吹き飛ばされ、慣性に任せて二連グレネードキャノンを放ち、あちらももちろんわかっているとばかりにマシンガンを撃ち返して砲弾を破壊し、こちらは空中に舞っている自身のマシンガンを拾い直して爆風の向こうから連射し、ホワイトはバックステップからのミサイルで迎撃、再びこちらはマシンガンを連射しながら全速力で突っ込む。ホワイトは前に出てから衝撃波を胴体から解放しようとし、こちらはブースターの勢いをつけて強烈に蹴り込み、後方に押し込んで衝撃波の射程距離を狂わせる。

『マイグラント……!』

 そしてこちらが一歩踏み込み、相殺させずに衝撃波を解放して直撃させ、硬直したところをそのまま強化パイルバンカーで貫き、撃針を叩き込んで破壊する。

『……!』

 あちらのオペレーターが聞いてわかるほど吐息を漏らして驚く。

『そんな……!

 あなたは、一体……』

 彼は片膝をつき、轟炎に包まれて沈黙している。

『“ホワイト”の撃破を確認。

 お疲れ様でした』

 オペレーターの問いには答えず、シルヴィアが淡々と告げて視界が白けていく。

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