Black Star

 激しい重力に引かれ、彼は炎に巻かれ落ち続けていた。


『本部、本部!私は魔星に敗北した。増援を頼む』


 必死の通信へ、冷たい沈黙だけが響く。遥か下方、暗闇に赤い光が閃く。全てが狂い始めたこの宇宙を象徴するかのような邪悪な巨星。その断末魔が銀河を揺らす。不死鳥の灰の様な星間物質の靄から、紅蓮の炎を纏う朱の巨人が現れる。


『本部は私を見捨てた。これから、どう生きろというのだ?私は、どう独りで永遠を生き、この力で何を切ればいいのだ?』


 その咆哮は、しかし、途切れた。恐怖に顔を歪めた小さな弱き人々に、彼はその動かぬ顔で微笑みかける。護るべきものを、思い出したかのように。その、朱い、朱い姿は、恐ろしく、美しく、力強かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る