銀河から銀河へ

 地球を発ってから5年が経った。正確にはアラタが目覚めていた時間で、である。実際には1000万年が外界では経過していた。アンドロメダ銀河にも可住惑星は存在せず、人類の船団はさらに次の銀河を旅していた。トシコは半年前、コールドスリープから目覚めることなく冥界へと去った。その一方で宇宙船の中で生まれた命もあった。


「なあアラタ、人類はいつか、新天地に辿り着けると思うか?」


 アラタの友人となった青年イノトシ・コウジが尋ねる。


「どうだろうな…人類はこの旅路の中で何度も友好、敵対、多様な異星人と出会ってきた。我々は未だ局所銀河群の中から出ていないが、彼らによれば少なくともここおとめ座超銀河団内の全域がバランスを崩しているそうだ。その範囲内ではどの文明もかなり厳しい状態にあり、文明を賭けた椅子取りゲームが激化しているらしい」


「だよな…人類の宇宙船技術は殆どが侵略者のものの転用だ。原理が不明なまま使っているものも多い。それでは、強大な異星に勝つ事は難しいだろうな」


「他の超銀河団に行くには10億年はかかる。今の運用だと体感時間でも500年だ。しかも行った先で新天地が見つかる保証もない。椅子取りゲームを続けるか、宇宙船文明でも作るか、どこか適当な惑星をテラフォーミングするか、何処かの多種族星に少しずつ移住するか、それとも、侵略者になるか」


「現実的な選択肢はそれぐらいだな…」


「当面は椅子取りゲームを続けることになるだろうな。文明の存在しない可住惑星などが残っているのかは疑問だが」


 二人はしばし、窓から見える広漠な星海を眺めた。かつて見慣れていた星座はどこにも見当たらない。ときどき目にも止まらぬ速さで光の帯が駆け抜ける。高度な文明を持つ異星の超光速船だろう。人類の船の速度は精々光速の7割。この宇宙では、鈍間な幼児だ。

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