旅のはじまり
その目に、190万年ぶりの光が飛び込んでくる。アラタは未だ冷たい体を起こし、辺りを見渡した。その無機質な部屋では、今50人ほどの人々が目覚めようとしていた。
「皆様解凍が終わられたようですね。初めまして、1984077班班長のカミナといいます」
「新天地にはたどり着けたのですか?」
アラタと同時に目覚めたと思しき高齢女性が尋ねる。
「残念ながら、我々は未だ宇宙を旅し続けています。1000年に一度ほどの頻度でハピタブルゾーン内の適当な大きさの星に到達できているようですが、その全てが現状既に他文明が存在する、人間が住めない環境にあるなど新天地には不適でした」
「そうですか…」
「…まあ、まだ人類の旅は始まったばかりですし、宇宙的に見ればまだ我々の銀河系からアンドロメダへ向けて出たばかりです。これから400万年、我々の体感時間としては2年ほどで隣の銀河へは到達するそうです」
その後カミナはアラタたちに宇宙船での緊急対処法などを伝えるとコールドスリープに着いた。食堂と談話室を兼ねた部屋に50人が集まる。人工重力が機能しているようで地球と変わらない重力が存在していた。先程発言していた老婦人が口を開く。
「班長に指定されました、株式会社ミナト北洋宇宙工業元社長のミナト・トシコです。さて、まずは自己紹介から始めましょうか。…そちらの若い男性、あなたからお願いします」
その目力に気圧されたかのようにアラタは恐る恐る立ち上がる。
「地球守防隊日本支部石狩基地所属特殊戦用航宙艦アルカナ号の整備をしていましたサコミズ・アラタといいます」
士官学校時代の教官の顔色を窺いつつアラタは逃げるように座る。トシコは特に言葉を発することもなく自己紹介は次へと移った。
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