VERMILION ARCANA

 満天の星が輝く空を、彼は見上げていた。遠い、遠い、辺境の寂れた星。古の友によって、彼の名がその巨像に刻まれていた。


“VERMILION ARCANA(朱色の神秘)”


 彼は、自らをそう呼ぶ彼らを、心底愛おしく思っていた。だから、1000年の時の後に訪れたその星が荒れ果てていたことを、深く悲しんでいた。


「…記録を見るに、私がこの星を離れた60年の後に人類の8割が宇宙へと旅立ったようだな。いつか、私は彼らと再開できるだろうか」


 空に、文字列が輝いた。


『文明保護員339号、第238-29537星系4番惑星へと向かえ。先程侵略戦争が勃発した。健闘を祈る』


 彼は地響きを立てて立ち上がると、赤みを帯び始めた東の空に浮かぶ明けの明星の方に向かって、飛び立っていった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る