三人のスナイパーの酒場談義

奈良まさや

第1話

三人のスナイパーの酒場談義


深夜の薄暗い酒場で、三人のスナイパーがカウンターに並んで座っていた。グラスを傾けながら、最近の「戦果」を自慢し合っている。


一番目のスナイパー:マイク


「俺の話を聞いてくれよ」マイクがビールを一口飲んで口を開いた。「先週の任務なんだが、ターゲットが酒場から出てきてよ。完全に千鳥足だったんだ」


「それで?」隣のジョンが興味深そうに聞く。


「普通なら簡単な獲物だと思うだろ?ところがどっこい、あの野郎の千鳥足が予測不可能すぎて!」マイクは手を振りながら続けた。「右に3歩、左に2歩、後ろに1歩、また右に...まるでダンスしてるみたいだった。俺は10分間も照準を合わせ続けて、結局眩暈で倒れて逃げ遅れそうになった」


バーテンダーも思わず笑いを堪えながら聞いている。


二番目のスナイパー:ジョン


「それは大変だったな」ジョンがウイスキーをストレートで飲み干した。「でも俺の方がもっと酷かったぜ。実は俺も任務前に...ちょっと飲みすぎちゃってさ」


「まさか!」マイクが驚く。


「そうなんだ。ふらつきながら屋上に上がって、スコープを覗こうとしたら手が震えて落としちまった。スコープは、、、ま、いっかって。

せっかくだから立ち上がって千鳥足で、転倒しながら撃っちゃったよ」


「無茶苦茶だな!」


「でもな、酔っぱらいの勘ってやつか?なぜか一発で決まったんだ。後で同僚に『お前、そろそろ始末書だな?!』って言われたよ」


三人とも大笑いしながら、次の酒を注文した。


三番目のスナイパー:デイブ


「君たちの話も面白いが」デイブが眼鏡を拭きながら静かに話し始めた。「俺の最近の任務は...ちょっと特殊だった」


「どんな?」二人が身を乗り出す。


「ターゲットが100メートル走の選手でさ。しかも競技中に仕留めなきゃいけなかった。普通なら止まってる相手を狙うだろ?」


「そうだな」


「でも俺は違うアプローチを取った。ゴム弾を使って、絶妙なタイミングで心臓の特定の箇所に当てたんだ。医学的には1万分の1の確率で心臓発作を引き起こせるポイントがあるらしくてね」


「まさか...」


「結果的に、彼は『競技中の心臓発作』として処理された。完全に事故扱いだ。しかもトップでゴールテープを切った瞬間だったから、『勝利の興奮で心臓に負担がかかった』って報道された」


バーテンダーが「それ、多分、ターゲット間違いだよ。100メートル走でトップになるようなやつは命狙われないよ...」と呟いた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

三人のスナイパーの酒場談義 奈良まさや @masaya7174

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ