Day2 風鈴 (御代田、坂城)
待ち合わせは、映画館の駐車場だった。
廃業したショッピングモールの向かいに位置する映画館は、以前と同様に平面駐車場が使えて、しかも今度はショッピングモールの客との間での駐車場の獲り合いにもならないので平和だ……などという話がついぞ出てこない程度には、ほどほどの混み具合である。
それもそのはず。もう少し大学に近いところにあるショッピングモール併設の映画館がメジャーどころを上映することが多いからか、上映作品が若干ニッチなのだ。
そんなこんなで平日午前、ガラ空きの屋根もない駐車場に着いた御代田は、車のドアをバタンと閉めて、ズボンのポケットに両手を隠して歩き出した。今は少しでもこのギラつく陽射しから隠れたい。
映画館は壁沿いにポスターケースが並んでいて、いつ来ても見飽きない。眺めながら屋根のある方へと歩くうち、微かなチリン、という音が段々大きくなってきて、御代田はキョロキョロと周りを見回した。
2本の柱にそれぞれ作られた精緻な蜘蛛の巣、陽射し、覆いに隠された旧ショッピングモール、映画館の入り口、の、左上隅でひらりひらりと短冊が揺れていた。揺ると少しして音が鳴る。風鈴だった。
涼やかな音になんとなく涼しいような錯覚を得て、御代田はその入口から少しばかり離れたところで待つことにした。駐車場はきっと、見渡せる。それでも会えなかったら――
「あ、みったんやっと来た、こっちこっち」
自動ドアにかき消された風鈴は、それでも変わりなく、くるりくるりと回り続けていた。
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