【文披31題】安曇理工科大学の夏

ritsuca

Day1 まっさら (鰺坂)

「まぁ、ちょっとアプローチを変えてみようか」

「……はい」

 次の面談日程を確認した後、一礼して教授の研究室を出て一歩、二歩、三歩、−−ここまで来れば教授からも学生室からも聞こえないだろうか。ふぅ、と吐き出した息は重い。

 この春に学部を卒業して、卒業研究で扱ったテーマを発展させた内容を大学院での研究テーマに据えていた。テーマ自体は悪くない。でも、今のアプローチでは来年の今頃を何もない状態で迎えてしまう。だから、アプローチを変えた方が良いんじゃないか。

 教授からの指摘は尤もで、だからこそ、ぐしゃぐしゃにとっ散らかった気持ちを鯵坂は持て余していた。

(甘いもの食べよう。モ◯王だ、◯ナ王。そしたら−−)

 そうしたらまた、まっさらな紙に書き出していこう。これで終わりでは、ないのだから。

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