Day15 解読 (屋代、滋野)
「うーん……? あー、え、おん?」
その日、屋代が学食で担々麺を食べ終えて研究室に戻ると、同期の滋野がひたすら唸っていた。
ツッコミ待ちなのかそうでないのか、空気を読むのは元々苦手だし最近はもう読まないことにし始めた屋代は、どちらにあたるかを考えることもなく、どうした、と訊ねた。
ぐしゃぐしゃとかき乱した髪も手もそのままにこちらを振り向いた滋野は、いいところにいいものがきた、とばかりに席を立ち、横歩きで近寄ってくる。
なんだその歩き方は。思いはすれど、口には出さず、ただ片方の眉を跳ね上げて、屋代は滋野がずい、と見せてきたものを見る。
「……なんだこれ」
なんだこれは。
ノートの罫線と平行に引かれたフリーハンドのうねうねとした線のようにも見えるし、日本語であればひらがなか、英語であればひたすら繋げて書かれた文字のようにも見えなくもない。
読む向きが違うのだろうか。渡された文庫サイズの小さなノートを右へ、左へ、90度、180度とぐるぐる回してみても、一向になんだかわからない。
「昨夜寝る前に書いた明日のゼミ用のメモ……たぶん」
「……じゃぁ、日本語か。お前、英語はからきしだもんな」
「そうだな……って、屋代、もう少しオブラートに包んで!」
「まぁ、がんばれ。……たぶん、そのメモの解読諦めた方が早いんじゃないか?」
「俺もそう思う……」
でも諦めきれないんだよなぁ、とぼやく滋野がそのメモの内容を思い出したのは、翌日、ゼミが終わってからのことだった。
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