Day14 浮き輪 (梶原家)

 さて、今日も日課の散歩に、とドアを開けたら犬が胴体に浮き輪を引っかけていた。

 起きて20分で犬の散歩であれば許されるであろう身支度を整えているので、何分まだまだ眠い。だからきっと、何かを見間違えたのだろう。

 そう思って目を瞑って10秒、どうしてまだ連れて行ってくれないんですかとばかりに吠える犬は、たっぷり10秒かけてそうっとそうっと目を開けてみても、やっぱり胴体に浮き輪を引っかけていた。

 そういえば昨日は帰ってきたときにやけに浮かれた弟を見かけたような気がする。というか夏だから浮き輪を買ったのなんのと言っていた記憶も蘇ってきた……ような気がする。その後どんな経緯でこうなったのかはわからないが、今は何よりもまず、浮き輪を外して身軽にしてやらなければ。

 さぁ行きましょう行きましょう、と目をきらきらさせた犬と目線を合わせるべく、知子はしゃがみこんだ。

「ステイステイステイ……、よし、じゃぁ、ごろん」

 ごろんと寝転がった犬からなんとか浮き輪を外し終えてご褒美に餌をやると、知子は時計を見て3秒固まってから嘆息し、そうして、家族を――具体的には弟を――散歩担当代理として召喚することにした。

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