【試作②】よつばさん『オーバードーズ』は危険です

「あのお⋯⋯」


「んにゅ?」


「は、恥ずかしい⋯⋯です」


「こ、コレしかにゃいから、あ、あきらめて?」


「でも、コレは⋯⋯」


 僕の胸にブラジャーが装着されている。とっても恥ずかしいのです。


「うん、よ、よく似合ってるよ? にゃ、にゃんといっても、このボキュの、お、『お気に入り』だからねっ! どどど、どうだい? じょ、女性用下着に抱かれた、き、気持ちは?」


「よくわかりません。それよりコレ、よつばさんの下着⋯⋯なんですか?」


「にゅ!? き、ききき、キミ! 今、ふ、不届きにゃことを、か、考えたねっ!?」


「よつばさん? それ、被害妄想です」


「だだ、だってキミ、ボキュの胸を見て、い、言ったでしょう? ち、ちっぱいって、ひ、貧乳を、ばば、バカにしてんでしょう!? きき、キミは今、ぜんぜん、ぜんぜん、全世界の貧乳女子を、て、敵に回したのだじょ!?」


「だって⋯⋯」


「だってにゃんだ!? しょ、しょーじきに、い、言ってみにゃさい!?」


「僕、よつばさんの下着に抱かれてるんでしょ?」


「にぎゃ──っ!? よよよ、よくもそんなっ、は、恥ずかしいことをっ!!」


「自分で言ったんじゃないですか。あと、よつばさんて胸に自信がないんですか? その、ちっぱいて言うんですかね? 僕、好きですよ?」


「ふぎゃっ⋯⋯」


 あれ、よつばさんが卒倒してしまいました? いえ、ピクピクと虫の息くらいの感じで動いるでしょうか。

 ハシッ、ローテーブルの上の薬瓶に手をのばしましたよ?


 ジャララ、と中のものを大量に手のひらに乗せて、ゴキュ、飲み込みました。


 ジャララ、ゴキュ、ジャララ、ゴキュ、コロリ⋯⋯コクン。


 どうやら瓶の中の錠剤全て? を飲み込んでしまったようです。さすがに飲み過ぎではないでしょうか?


「ぼっ、ボキュが過剰摂取オーバードーズで死んだら、キミ! キミのせいにゃんだからねっっ!?」


 タンッ! 机の上に瓶をたたきつけた。


「⋯⋯よつばさん? それ、『ラムネ菓子』って書いてますよ?」


「にゃに──っ!? このぼ、ボキュをたばかったにゃ!?」


 いったい何でしょう、この生き物は。


「はぁ、はぁ、はぁ、ゲボッ!」


「ほら、無理して全部食べるから!」


 僕は彼女の背中をさすった。


「そ、そそそ、そんにゃ見え透いた優しさにゃんかに、ぼ、ボキュは騙されにゃいぞっ!?」


 知りませんが、の中にハートが見えます。


「くそう! こ、このボキュが、ほほ、翻弄されるにゃんて!?」


 プンスコ怒る彼女もステキです。


「し、仕返ししてやるじょ!」


「僕、よつばさんのペットですから、お好きにどうぞ?」


「にゃに!? げ、言質とったよ!?」


「ふあっ!?」


 よつばさんが下着姿の僕に抱きついて来ました。そして何やら⋯⋯え?


「すんすん、すんすん、すんすん、す──は──っ! にへ〜♡」


「ちょっ!? よつばさん? 僕のワキを嗅がないでください!」


「にゃっ! す、好きにしていいって、い、言った!」


「うっ⋯⋯わかりました。存分にどうぞ?」


「んにゅ? い、いいの?」


「はい」


 なんでしょう? 後ろに⋯⋯いや、まさか?


「よつばさん、さすがにそれはやめたほうが良くないですか?」


「⋯⋯にょ?」


 僕のお尻を鷲掴みしてフリーズするよつばさん。


「悲しそうな顔、しないでくださいよ。僕、よつばさんのそんな顔、見たくありません。それよりいま、着替えの途中ですよね?」


「ふぁっ!?」


 その顔、いま思い出しましたね?


「こ、こここ、コレを着たまえ!!」


「え、コレ着るんですか? この僕が?」


「ほ、他にも誰もおらんじゃろう?」


 確かにいませんが。


「コレ、女性ものですよね?」


「にゃ、にゃにか不満でもあんにょかにゃっっ!?」


 そんなジト目で見られても。


「⋯⋯わかりました。それじゃあ着ますから、あっち向いててください」


「やたっ☆」


 そんなキラキラしいで見ないでください。期待されても、僕、困ります。


 ⋯⋯さて?


 スカル柄オフショルダーパンクトップス。


「か、肩を大胆に露出するデザインが魅力の、ぱ、パンクスタイルトップス。は、反体制的にゃ髑髏柄。そ、袖や裾には、す、ストラップとチェーンが、え、エッジを効かせてるじぇ」


 レースアップゴシックパンクミニスカート。


「あ、編み上げデザインとスタッズ装飾が際立つ、ご、ゴシック風ミニスカート。てぃ、ティアードフリルはエッジを効かせて、す、裾のスタッズがアクセント♪」


 スタッズ付きパンクロック厚底ブーツとチェーン付ゴシックパンクブーツとカバー。


「び、鋲打ちデザインが特徴の、あ、厚底ブーツ。ふ、複数のベルトと編み上げで足にフィット。ば、バックルやジッパー、チェーンが施されたブーツカバーが、か、可愛い♡」


「ちょっ、よつばさん? あっち向いててくださいよっ!? は、恥ずかしいんですからねっ!?」


「か、飼い主と呼びたまえ!」


「飼い主⋯⋯さま?」


「むふ、むふふ♪ よろ、よろしい。い、いい! いいよ〜? よ、よく似合ってる! さあ、ご、ご褒美をやろう!」


「ご褒美、ですか?」


 よつばさんが取りだしたご褒美とは。


「は、ハートモチーフ付き革製チョーカー」


「カッコよく言ってますけどソレ、『首輪』ですよね?」


「ちょ、チョーカーだ!」


 どう見ても首輪です。まあ、僕は彼女のペットですから。仕方ありませんね?


「ほ、ほら、おいで?」


 僕は彼女の前にひざまずきます。


「ふゅーっ、ふゅーっ、ふゅーっ⋯⋯」


「飼い主さま? 興奮しすぎです」


「こっ! これが興奮せずにいりゃれりゅか──っ!!」


 大変です。飼い主さまがご乱心です!?

 また新しい薬瓶を持ち出しましたよ?

 どうやら過剰摂取オーバードーズを試みているようです。


「それ、ラムネ菓子ですから」


「ふしゃ──っ!!」


「そんなに怒らないでほしいです。だって僕、あなたの従順なペットですよ?」


「ふぎゃん!」


 どうやら落ち着いたようです?


 彼女の細い手で、僕の首に彼女の所有の証が着けられました。


「こ、これでキミはボキュのものだ」


「はい」


「それからき、今日からキミの名前にゃまえは『プス』だ! わ、わかったか!?」


「よつばさん、聴き間違いですよね? どうせ英語なら『キティ』の方が可愛くないですか?」


「にょ!? ぼ、ボキュはキミの何だ?」


「飼い主です?」


「わ、わかっているなら、い、異論は認めん!」


 プスかぁ⋯⋯。まだ元の名前『まこと』の方が良いのですが。


「あの⋯⋯」


「かっ、過去の自分は棄てろ!」


 はっ!? 確かにそうです。


「⋯⋯はい! よつばさん!」


 僕は今日、名実ともに彼女のペットになりました。


 これは、僕が望んでなったものです。


 この僕が、彼女のペットとして生きてゆくと、決めたのです!!





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