第7話 絶望感

 何ということだ!


 我々の祖先が10世紀も前に、とんでもないことを犯してしまった。

 祖先が送り出した宇宙船。到着した星々で、新たに生まれようとしている生命体を駆逐している可能性がある。


 それは再度、太陽系探査をして解ったことだ。

 数百年放置していた小天体にある基地に、カビが繁殖していた。

 それを新たにやってきた我々が駆逐しようとしいたのだ。皮膚についていた僅かな菌によって、生き残っていたカビが消えていく……気づくのが遅ければ、放置されていたカビは全滅していたかもしれない。


 太陽系の身近で起きていることが、他の星でも起きないはずがない。


 10世紀も前に送り出した宇宙船には、我々には無毒かもしれないが、もしそこに生命を宿そうとしている星にとって有害になりかねない。


 なぜ、それに気が付かなかったのか?


 解っていて送り出したのならば、『隣人』を探すどころの話しではない。

 その『隣人』を殺しかねない罪だ。


 罪は未然に防がねばならない。


 しかし、償いの罪を防ぐために派遣した救難船に接触した者たちは、1割も同意して地球に戻ってくれなかった。すでに失われたデータをなんとか復元し解析した元に、割り出した数の5%にも満たない。


 それもそうかもしれない。


 10世紀という人間には長い時間が経っている。すでに地球を故郷とするものは、亡くなってしまい世代交代しているのが現実だ。

 だからとして、地球人ととしては変わりはない。

 強力な銀河宇宙線にさらされて、DNAに変化があったとはいっても、この僅かな期間で種として隔たりが出るわけではない。しかし、送り出した宇宙船が故郷であり、到着した恒星系が故郷なのだと、彼らは云う。

 更には恒星系に侵食して根を貼り更に汚染を広げよう新たに外宇宙へ出発しようとするグループまであった。


 止めなければならない。

 祖先が犯した罪を彼らが犯すことを、見ているわけにはいかないのだ!

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