第8話 既視感

 そうだ。これは我々が何度となく体験した人間史だ。


 それが小さな星の上、ひとつの恒星系間でこれまであったことと対して変わらない。それが銀河の小さな恒星系を中心とした数十光年ほどの領域で、行われたこと以外は人間史の中で何度も繰り返されたことだ。


 始まりの星の人々は、自分たちの過去の精算をしたかった。

 旅人たちは、自分の見つけた土地を守りたかった。


 もとは同じ星の種であっても、年月が経ちすぎお互いの考えが変わってしまったのを、受け入れられなかったのだ。


 人々の話し合いは平行線に終わり、武器を取り対立する。所詮は生命。宇宙を旅するほど高度に進化しようと、弱肉強食の掟からは外れることはできなかった。


 その先は、これまで歴史の中で何度も起きたことの焼き直しだ。

 救いだったのは、始まりの星の人の中にも旅人たちに同情するものがいた事。

 それは果たして本当に同情なのかは、人の心の奥にはわからない。だが、旅人たちが持ち合わせていない技術を彼らは提供した。超高光速航法など――。


 防戦……いや、虐殺に近かった旅人は恒星間の途方もない距離を離れても団結し、始まりの星の人々に抗った。しかし、戦火は収まることを知らず……全ては言葉が届かないことが原因だ。


 未だに辺境ではどうなっているか?


 講和か戦火が続いているか……気がつけば双方に億単位の被害をもたらした。

 正確な数字など誰も把握していない。


 耳を傾けてくれるだろうか? 旅人たちの子孫は――。


 彼らに植え付けたのは、人間の憎悪でしかない。

 ただ祖先が夜空を見上げるとき、肩を並べて語らえる『隣人』が欲しかっただけだ。その隣人には『旅人』でも良かったかもしれない。

 長い旅路は話には尽きないであろう。しかし、それを台無しにしたのは始まりの星である我々だ。


 こんなことであれば、宇宙探索という途方もないことに、人を送るようなのことはしなければよかったかもしれない。


 誰かが止めてくれなかったのであろうか――。

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