第3話 飢餓感
ああ、聞こえますか? こちらは――
母星と呼べる場所はどこにあるのか知らない。見上げた夜空の何処かがそこであろう。この声が聞こえたところで、返事が返ってくる頃には自分が生きているかわからない。
あまりにも宇宙は人類には広すぎる。
知らない母星よりも、隣の星に着いた連中のほうが話は早い。
まあ、年単位だが――。
なんでも到着した恒星には、母星に似た岩石惑星があったそうだ。だが、大気構成も重力も宇宙船内とは全く異なるため、その星に降りることはできなかった。そのため星を回る月として宇宙船を拡張しているそうだ。
彼らは諦めていないようで、自分たちがその星に降りれなくても、いつか遺伝子改造なりで、その岩石惑星へ生命体送り出すのを目標にしているそうだ。
気の長い話だ。
まあ、気の長いのは自分たちの親やその前のずっと前の世代だろう。
恒星を拝むこともなく、ずっと宇宙船の中で暮らしていたのだ。
着いた恒星系にあった惑星は、潮汐ロックでひたすら同じ面を恒星に向けている木星型惑星……いわゆるホットジュピターだ。出発時点でここがガス惑星しかないこととを知っていたはずなのに、祖先はなんて貧乏くじを引いたんだ。こんなところ、エネルギーになり得る水素やヘリウム3を回収することも一苦労だ。
観測できなかった岩石惑星にかけたのだろうか?
水が豊富にあった母星から遠く離れても、生物は水なしでは生きていけない。それに酸素なしでは生きていけない。
酸素は二酸化炭素を分解すればできる。だが、分解するために光エネルギーが必要だ。そのエネルギーを作るのに、水素とヘリウム3が必要になる。水も酸素と水素からできている。
宇宙船のタンクに保存されている量は有限だ。
眼下のホットジュピターには大量に保有しているだろうが、回収の方法を考えなくてはならない。
母星から持ってきた小型探査船はあるが、一体いつから使われていないか……どう使うかわからない。
マニュアルはどこかにあると思うけど、扱える者がいない。
育成し、探査船を回収船に改造して……それを行っていくまで、宇宙船のタンクの残量は持つだろうか?
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