第4話 罪悪感

 過去の我々を許してほしい。


 先祖に罪深いことをしてしまった。

 粗末な宇宙船棺桶に数万という人を乗せて、外宇宙に流してしまった。


 当時の人工頭脳AIが出した『ロボット』を用いた宇宙探索の結論のほうが正しかった……そうとしか言いようがない。


 最後の宇宙船を送り出してから数百年……更に長い時間が経ち、こちらの事情が劇的に変わってしまった。


 何も成果がないと、夜空を見上げ、耳を傾けるのをやめてしまった。

 事情はある……ひとつの星に隕石が衝突したことが発端だ。

 それは些細なことと当初は考えられていた。楽観していたのだ。太陽系の隅々に進出していた我々にとって、惑星ひとつが壊滅したぐらいでは文明に与えるダメージが少ないと――。

 しかし、蓋を開けてみれば経済は連鎖的に崩壊し、太陽圏内の秩序は手の施しようのないところまで治安が悪化してしまった。


 その混乱が収束するまでに、更に数百年がかかってしまった。


 当然ながら、外宇宙への関心など薄れ、プロジェクトは閉鎖され、我々は一つの太陽に守られた殻の中に閉じこもってしまった。


 世代も変わり、すっかり過去のものとなってしまった『ダンディライオン』計画。


 詫びなければいけない。

 見捨てた祖先たちの子孫が、広大な外宇宙をさまよい続けているのだ。


「彼らを助けよう!」


 どこからかそんな声が上がってきた。

 数百年に及ぶ太陽圏内の混乱。それに閉じこもっている間に、我々はついに光を超越する方法を見つけた。

 発見発明の経緯が、人を殺すためだったかもしれないが、これからは過去の過ちを立たすことができる。


 そして今日、彼らの孤独な航海に終止符を打つべく、1隻の船が出発する――。

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