二 解かれ
あ、と小さく声がもれる。いっぱいに目をみひらいてしまう。
いっそあざやかなまでに真白い、
ほっそりとしてきらきらしい太刀。左手に握られた鞘は銀地で、
実緒は、そのひとを仰ぎ見た。すんなりと、目が合った。つめたいくらいにすずしげで、なんでもひょいっとやってのけそう。なんだかそういう面差しの、若い男のひとだった。すこし年上くらいだろうか。頭の隅に思いつつ、実緒はその若者を見つめる。
たちまち、ひかりが風を切り裂き、がらん、がらんと虚ろに響く。手枷足枷の、転がる音。金物の枷は、落ちていた。すべてまっぷたつになって、すべて舞台に落ちていた。にわかに縛めを解かれた実緒は、驚くこともできなかった。
なにが、なんだかわからない。若者はなにか言うこともなく、いまだこちらを見下ろしている。ただ、そこに立っていて、実緒をその目に映している。
実緒も、ただ、若者を見ていた。やはりひかって、かがやいている。いったい、どうしてそうなのだろう。ただびとだとはとても思えず、なんだかまるで神さまみたい。でも、あぶなくはないのだろうか。いくら神さまみたいと言っても、障気を踏んだままでいるのだ。ふれれば、おしまいになるはずの障気────
突然よいことを思いつき、実緒はその場に立ち上がった。もっと早く気づくべきだった。このひとにはとりあえず、かろうじて無事に残ったここに立っていてもらえばよい。場所を交代すればよいのだ。さっそく足を踏み出して、障気に乗ろうとしたときだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます