雨とサンダル
私はお母さんとうまくいってない。
私が小学一年生の頃から、私たちの家族は喧嘩ばかりしてきた。
その頃は、お父さんとお母さんが喧嘩していたから、仲裁をよくしていた。
そして、それから十年たった今、お母さんと喧嘩するのは必然だったのかもしれない。
いつも喧嘩は些細なことから始まる。
起こしてと言ったつもりなのに起こしてくれないお母さん。
起こしたと言い張る嘘つきなお母さん。
それを見て見ぬふりするお父さん。
お父さんの目は反抗期の娘を見るようだった。
私の方を見たとき、なにもしないくせに、どこか安心したような顔をしてる。
まるで、鳥のさえずりを聞いたときのような、そんな顔を。
お母さんの目は、恐い。
根元的な恐怖を感じる。
怒られた記憶よりも、怒鳴っている声がフラッシュバックする。
なにも届かない。
そう思わせてくる。
でも、屈してはならない。
今後、同じことを起こさないように。
そんな小さい喧嘩をしてから、学校に向かう。
いつも私は自転車で登校するのだが、今日はあいにくの雨。
仕方なく傘をさしながら走って向かう。
ギリギリの時間だ。
なんだこうなるんだか。
私が悪いのはそうなんだが、お母さんも悪いと思う。
責任転嫁したいだけかもしれないが。
やっと着いた。
ざっと十五分かかった。
何とか間に合いそうだ。
私は下駄箱を開けた。
そこには、沈黙だけが入っていた。
サンダルは?
この学校では、サンダルを履くのが義務だ。
校則でそうなっているから。
盗るとしたら、涼香ちゃんのグループしかいない。
私は黙った。
泣きそうになりながら、喚き散らしたかったが耐えた。
あいつらの思い道理にはしたくなかったから。
靴箱の扉を静かに閉める音が、やけに大きく響いた。
私は静かに保健室に入っていく。
そこなら仮のサンダルを貸してくれる可能性があるから。
前の日の私へ。
明日になにされるか分からなくて震えていた私へ。
サンダルを盗られるよ。
しかも雨。
踏んだり蹴ったりだって、言っていいと思う。
でも、私は我慢する。
だってそれしか、涼香を否定する一つの行動だと思うから。
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