誰も何者でもない

あゆやか

佳奈

1ヶ月の重み

 クラス替えの時から、私は悪口を言われてきた。

 今日でちょうど1ヶ月。

 最初はいじりみたいなものだった。

 頭が悪いし、運動も苦手。

 でも、リアクションの良さはピカイチ。

 そう涼香ちゃんに言われた。

 誉められているのか分からなかったけど、皆笑ってたから、私も嗤った。

 そこから、いじめはエスカレートしていった。

 傘を盗られたり、悪口の鋭さが増したり。

 お弁当を落とされたり、靴が隠されてり、まあ、いろいろ。

 全部を話せない訳じゃないけど、頭の中の言葉を聞かれてるかもと思うと、ちょっとね。

 自意識過剰かも。

 とにかく、この1ヶ月の間は、友達という友達も出来なかった。

 でも、一人だけ。

 悪口を言われる前に話してくれる人がいた。

 加藤玲香ちゃん。

 おっとりしたしゃべり方で、優しい玲香ちゃん。

 テストの前に一緒に私の家で勉強したりした仲。

 でも、最近は涼香ちゃんのグループと一緒に行動してるみたい。

 裏切り、には感じないけど、複雑な気分。

 どうやら様子を見てると、涼香ちゃんから玲香ちゃんにすり寄っていったらしい。

 でも、話しかけてくれるってすこし思ってた。

 期待をしてしまっていた。

 その時、私はただの飼われてた金魚なんだと思った。

 涼香ちゃんに飼われてる金魚。

 関わるときは、エサを与えるときだけ。

 それもあまり美味しくないエサを。

 一緒に暮らしてたもう一匹の金魚も涼香ちゃんに盗られちゃった。

 ……こんなことでむきにならなくてもいいのにね。

 こんなこと言ったりしたら、顔真っ赤にして怒ってきそうだ。

 でも、そんな姿すら観てみたい気がする。

 私がいじられ始めたのは玲香ちゃんと仲良くしてたからだと思う。

 おっとりした優しい玲香ちゃんはこのクラスでは人気者だから。

 玲香ちゃんが私を見てた時は楽しかった。

 初めての友達ができたみたいで。

 でも、もうそんな時間は来ない。

 ちゃんと分かってる。

 私はなんでこんなことになっているんだろう?

 話しかけられただけなのに。

 一緒に勉強しただけなのに。

 普通ってどんな人のことを言うんだろうね。

 次はなにされるんだろう。

 明日が怖いけど、来ないと行けない。

 家にいたら、呼吸のしかたを忘れちゃうから。

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