<正拳と裏拳>
「ウチのお客に手を出すんじゃないよ。女と飲みたきゃ別の店に行きな。」
「なんだと?」
二、三の言葉の応酬を経て、男がジェマに殴りかかった・・が、ジェマは拳を受け止め、片手で男を殴りかえし、男は数m吹っ飛んだ。
残りの一人はなおも銀髪の女に絡んだが、いい気分で飲んでいたところを邪魔された女がキレた。
「うっさいのよ、さっきからー!」
裏拳でこの男も数m吹っ飛ぶ。
「??・・???」
何が起きたか分からないでいる男達に、周りの客の声が聞こえてくる。
「ジェマとインガに手を出すたあ、バカな野郎だな~」
「新顔だな、どこの阿呆だ?」
「だれか!」ジェマの声が響き渡り、カウンター裏の厨房から若い男が二人出てきた。
「こいつら、片付けな。」
「「へい。」」
男達がズルズル外へ引きずられていく途中で、黒髪の若い女がすれ違った。
男達をちらりと見ただけで表情は変えず、真っ直ぐインガと言われた銀髪の女の元に向かう。
「おや、ミヤビ。」
「こんばんは、ジェマさん。」
「お迎えかい?」
インガを親指で指すと、ミヤビはうなずく。
「ええ、緊急事態で。」
「ご苦労さん。だけど、こんなんで役に立つのかい。」
「いないよりはいいです。」そして声を潜める。「ゲート、使えます?」
「もちろん。さ、インガ!」
ジェマは軽々インガを肩に担ぎ上げると、そのまま階段を上がってインガの部屋に運んでいった。
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